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 昔、オーバとバレンタインにもらったものの数で競ったことがある。向こうが勝手にけしかけてきて、勝手に俺の方が多いぜと喜んで去っていった。確かに俺は貰わなかったが、実は大抵のらりくらりかわしていたことを教えてやったらあいつは、一体どんな顔をするのだろう。
「デンジさんそれは流石にあたし、ひどいと思いますよ」
「なんで」
「女の子にとっては戦争にも等しい日なんですよバレンタインは!そんな日に相手の姿が見つからないなんて……」
「まあ、男にとっては地獄だけどな」
「でも貰えたら嬉しいでしょう?」
「貰えたらな」
 昔と違って今は避けようもなく、色々とジムに送られてくるのである。さっきジムを閉めた後、食べきれないと思ったのでジムの中のトレーナーと分けてきた。今はその中のひとつの、よくわからない生き物の形をしたクッキーをミカンと食べている。ということをミカンに話したらミカンはこちらが驚くぐらい驚いた顔をした。
「えっこれ頂き物だったんですか」
「悪いか」
「面白い形してるなあとは思いましたけど!あたしが食べちゃいけませんよ、デンジさんが消化しないと!」
「これくれたのチマリ」
「……ああ、それなら」
 先日チマリが皆に配ると言って、この部屋でミカンと一緒にクッキーの練習をしたのだった。焦がしたりして色々大変だったはずなのに、数日で随分彼女は成長している。きっとたくさん練習したのだろう。
 クッキーを食べ終えて、貰い物を積み上げた部屋の隅を見ると、それだけで胸焼けがする気がした。
「他にもまだあるけど、食うか?」
「チマリちゃんが作ったのじゃあないんですよね」
「不特定多数だけど」
「……わたしがデンジさんにお菓子をあげた人の立場なら泣いちゃいますよ、ちゃんとあげたかった人に食べてもらえないなんて、悲しすぎます」
「でも食いきれなくて捨てんのも嫌じゃないか?」
「確かにそうですが……」
 ミカンはあまり納得した様子ではなかったが、結局二人で消費していった。たまに手持ちのポケモンを出して手伝ってもらったりしたら、早く傷みそうな生クリーム系のものはなんとかすることが出来た。
「はあ、もうすぐ晩ごはんのはずだったんですけど、お腹いっぱいですね」
「暫く甘いもんは要らないな」
「お茶漬けでも食べます?」
「それぐらいが丁度いい」
 適当にそれだけ腹に入れて、一息入れる、ミカンとダイニングで向かい合っているとふと思った。
「そういやお前は何か作ってないの?」
「はい、デンジさん、毎年すごい数だってこの間話してたので」
「マジで」
「わたしなりに空気読んだつもりだったんですけど……あれ?」
 呆れたが、こんな風にずれたところは、ミカンらしいといえばミカンらしい。俺が笑っていると、ミカンはおろおろしているのが目に見えてわかったので、余計に可笑しかった。






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 タイトルがやっつけすぎる



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