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 兄に呼び出されて待ち合わせた街の片隅のベンチでわたしは手首を撫でていた。

 「アレどしたのそれ」

 手首に貼り付けた絆創膏を見てやって来た兄は不思議そうな声を出した。

 「こないだこけたアル」

 「こけたんだ」

 兄は首を傾げる。

 「……別にそんなの貼らなくてもさ、普通にすぐ治るじゃん。俺ら」

 「まあそうアルけど」

 また無意識に絆創膏を撫でる。傷口が僅かに膨らんでいるのを何度も。

 「………兄ちゃん」

 「なに」

 「実はこけたとき、なんか刺さっちゃってたみたいで抜けないのヨ」

 「うわあ痛そ」

 「平気ネ」

 駄目だよ、兄はべりと絆創膏を剥がすとわたしの傷口を露にした。薄い皮膚の下に、なにか埋まっている。

 「抜くよ」

 ほんの少しの間で兄は判断したのかそう言った。待って。言おうとしたわたしを無視して兄は皮膚を破ってなにかを取り出す。斜めに刺さっていたらしいそれが肉を擦っていくのは気を失いそうなほど痛かった。

 「わ、穴」

 それは太い螺だった。ぼたぼた血を滴らせる手首を押さえる。だが血管に触れていたような箇所ではなかったので良かった。少し時間は掛かるかもしれないがすぐに消える傷なのだろう。
 手首を眺めて兄が言う。

 「あと残っちゃうかな」

 「気にしないアル」

 「こら、女の子なんだから」

 兄はわたしの手首を持ち上げるとなんの前触れもなしにべろりと舐めた。兄の唾液が染みて痛かった。兄が体の中に入ってくる感触なのだと思った。

 「……苦」

 兄はわたしの血のついた唇を拭うと呟く。それからそれしかなかったので傷口に先ほど剥がした絆創膏を再度貼った。

 「わたし血の味は嫌いヨ」

 「俺だってそんなに好きじゃないけど」

 けど、なに。
 わたしは兄に問いかけたが兄は笑ってなにも答えなかった。

 「あ、もうこんな時間。行かないと」

 「うん」

 「神楽が変な怪我してくるからー」

 「………ごめんアル」

 ま、気にしてないけど。わたしの頭を撫でると兄は行こうかとわたしの腕を引いた。傷がある方だったからひきつれて少し痛かった。

 「ね、神楽知ってる?チューする場所によって相手に伝えることができる感情があるらしいよ」

 「……知らない。例えば?」

 「目蓋は憧憬とか、なんか言ってた。俺も今日テレビで観たことだから詳しくは知らないけど」

 わたしは徐々に和らぐ痛みの中言った。

 「なんでいきなりそんな話するアルか」

 「………別に?」

 先に歩いていた兄はわたしを振り返って微笑む。







 「特に深い意味はないよ」

…………………………………………


 (手首だから舐めました)







 よく意味がわからない話になっちまった

 あとすみません沌子様!!
 沌子様が手ブロに描かれていた話を参考させてもらいました……><;;
 不快に思われたらごめんなさいですっ



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