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 この頃吐き気だとか頭痛いだとか気持ち悪いだとか多いので新八に連れられて病院に行ったら妊娠していた。(……うそ、)おめでとうがこんなにも嬉しくないなんてあるはずないと思った。

 新八と病院を出る。晴れ渡った空の下、気持ちは晴れない。新八がぽつりと尋ねてくる。
「銀さんとの、ってわけじゃないよね」
「あほアルか」
「うん」
 困ったように笑う新八をじとり睨んだ。だがこいつはきっと心からわたしを心配してくれているだろうことはわかっているので、わたしは笑う。新八の冗談めかした言い方が胸に痛かった。
「銀ちゃんには、この事ゆわないでね」
「いいけど、……どうするの?」
「……考えるヨ」
 新八は相手を聞いてこなかった。ぎりぎり胸が締め付けられる思いがする。一人にしてほしくなったので新八と別れて一人で街を歩いた。

 もし。

 もしもお腹の子を産んで手を繋いでここを二人で歩いたとしたらそれはそれで幸せなのかもしれない。だが相手が相手だ。あの馬鹿の子供だと思うと手放したくなる。もしも銀ちゃんの子供だったら。新八の子供だったら。また違っていたかもしれない。
「………」
 不謹慎だが新八が言ったことが本当だったらまだ良かった。なにがどうしてこうなったのか、忘れる準備をしていたはずのこうなる原因のあの時の場面が脳内に浮かぶ。そうしてあの男の笑顔を思い出す。

 愛したことなどない。兄として以外感情を持ったことなんて、
(………ない)
 どうせ傷なんてすぐ治るのだから、今ここで腹を裂いて何もかも無かったことにしたくなった。



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