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 何年振りだろう、と思った。
 舌足らずな頃、反抗期な頃と顔をつきあわせて今。少女だった面影の残るやや幼い顔つきと成長した体つきは俺の知らないものである。

 「朝だよ」

 と、ベッドで眠っている神楽に声をかけてみるも、この寒い寒い冷房のついた部屋の中でカーテンすら開けずにいるから、目は開けられることはない。
 理由はそれだけでなくて、癒えることのない傷が、神楽の体に残っているのも一因だと思われた。直接届いたのであろう鉄の塊は、未だに神楽の心臓の中にある。取り除いたところで神楽の目が開くことはないので、そのままにしておいた。そんな弾痕なら俺の心にもある。

 「今日も仕事があるんだ。嫌になるよ」

 話し掛けて真っ白なまるで氷みたいな肌に触れる。死んだものは内臓が腐るから、たいがい腐臭を放つものなのに神楽は無臭で、余計に悲しかった。原形が残らないほど傷ついていたのなら諦めもついた気がするが神楽は胸の傷だけで、あとは美しい。部屋を冷やしておく案は、冷凍庫の氷に触れたときに思い付いた。思い付かなければよかった。いまさら神楽を腐らせるなんて、できるはずがない。

 「でもさ、家族は慈しみあうものでしょ。俺は、間違ってない」

 わざわざ声に出して呟くのも虚しいと思う。これはただの肉塊だと自身に言い聞かせて、燃やして思い出にしてしまえばどんなにかいいだろう。閉じきったその唇に口づけられるほどの気概があれば、そうできたのかもしれないのに。俺はひとつ、くしゃみをした。

 桃色の睫毛に縁取られた瞼は開かない。
 今日も神楽は、死んでいる。










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 吉/野朔/美先生の漫画に
 死んだ妻を
 冷房が効いた部屋に
 隠しておく
 っていうのがあって

 美しい漫画です
 リスペクトさせていただきました
 問題が御座いましたら
 どうぞ



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