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 土方と沖田





 ほとほと嫌になる。未練たらしい自分に嫌気が差す。
「……いい加減起きろコラ」
 布団にくるまって姿の見えない総悟を蹴る。ごす、背中だろう固い足の裏の感触。何でィ土方さん、布の向こうからくぐもった総悟の声がした。
「おめェ仕事サボる気か」
「夜勤明けで辛いんでさァ」
「俺も同伴してたよなソレ」
「知りやせん」
 コイツは。扱いづらいことこの上ない。いいから起きろ、眠ィのは俺だって同じだ、おい、そのまま声を掛けて蹴り続ける。すると総悟は布団からわかりやしたと言いながら目だけ出した。鳶色の柔らかな髪。ふと脳裏に過る影が、
「……わかったならさっさと支度しろ」




 俺は踵を返し寝室を後にする。耳元で声がする気がする。ごめんなさいね、十四郎さん。くそ、くそ、この野郎。振り払おうとしてもあの頃の情景に脳内が満たされる。風に揺れる髪は紛れもなく甘い鳶色をしていた。そうなのだ総悟の髪は目は鼻は口はひどく似ている。思い出させるならいっそのこと死んじまえ。記憶に生き続けられるのも随分辛いものがある。死ね、俺の記憶。
(最低でさァ、土方さん)
 総悟の声が頭ン中で再生される。
 忘れたくなくても忘れらんねえんだよ、俺が弱いから。
 今もし総悟に死ねと言われたらマジで死んじまうかもしんねえと思った。




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 沖田とミツバさんがオーバーラップする土方みたいな



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