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 例えばこの番傘から発せらるる弾丸により妹の額が穴を開ける場面を想像する。そして開いた穴に己の指を突っ込み脳味噌に直に触れ掻き回し妹の全てを支配する。この指が脳味噌を揺らせば妹の言動なぞ操ることは容易いことだろう。どんなことでも言わせることができる。
(………グロ)
 目の前の妹の安らかな寝息は規則正しく愛しいものだが時折こういった考えに至る自分の頭が理解できないのである。あああどうしよう消えちゃいたくなった。番傘の発砲口に触れる指の腹が感じるひやり無機質な感触。そういえば何を思ったか俺は夜兎の血だって赤いんだよと妹に話したことがある。妹は不思議そうに首を傾げただってそれが実はとかじゃなくてさ当たり前だと思っていたんだ、皆と同じだと思っていたんだ、でもほんとうは俺ら人間っつうかアレ、まあ向こうからしたら怪物か何かなんだよ。ドゥーユーアンダースタンド?
「……オハヨウ」
「…………うん」
 薄ら寒い。神楽が目を覚ますとさっきの思考が消えていく。こんな真っ白な額に真っ黒な穴なんて開けたくない。神楽が身を起こす。髪の毛すごいことになってるねと笑いかけると寝起きで機嫌が悪いところにそんなことを言ったもんだからむくれた顔でひどいアルと呟かれた。
「もう兄ちゃんなんて嫌いヨ」
 神楽は布団に潜り込んでしまった。が、布団の向こうからものすごい腹の音が聞こえ俺はまた笑いだす。
「朝ごはんできてるよ」
 そう声を掛けると小さな声でいると神楽は言った。
「じゃ、起きて」
 がばっと布団を捲り上げると神楽は眩しそうに目を細め起き上がる。そうしてのそのそ食卓へ向かっていった。
















 俺は神楽の布団を片付けながら、心臓に小さな穴を開けられたような気持ちになっている。冗談でも嫌いと言われるのはあまり好ましくない。やはり額に穴を開けてやるしかないのだろうかと少し思ったが冗談を現象させる内容としては明るい未来が望めそうにないので、俺も朝食を摂りに行った。



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