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 血反吐が出る喉の中が苦い。今朝は鉄を食べる夢を見た。






 雨が降る足元の悪い畦道を歩く。外に出ると何故か晴れていてこんな晴れの中雨が降っているなんて不思議。と思った。
「……買い物行かなきゃ」
 傘を差して足元をぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃいわせながら歩く。喉の奥が苦い感覚が消えない。腰がだるい。
(いっそ死んじまいたい)
 精液を飲まされた昨日。テレビはお笑い番組をやっていた。深夜の番組の下卑た笑いはそのときのわたしには全くもって笑えたものじゃなく。
「う、え」
 思い出した味悪臭感触。吐き気。たまらず道端の茂みで吐く。吐きながら思う。
(何であんなもの飲ませるんだろう)
 生命が詰まった真っ白な液体。美味しいと感じるわけがない。一億人もの未来を飲み込んだと思うと殊更気持ち悪くなる。出口をいっそのこと、噛み千切ってしまえば良かったのだろうか!しかしそんなことは出来やしない、スーパーに着いたので買い物をする。そして肉と野菜とを買ってビニール袋を腕からぶら下げて帰り道を歩いた。その途中で犬を見る。電柱に片足を上げてマーキングしていた。ふと昨日のわたしを思い出す。抵抗すらできずぶっかけられた液体。わたしの喉の奥、体の中心にマーキング。なんて汚い兄。


 家に帰ると兄は優しく微笑み部屋へと迎え入れてくれるのだろう、恐ろしすぎる。買ったじゃがいもと人参とで肉じゃがを作ってやって誤魔化してやろうと思った。



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テーマ「人外ファンタジー」
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