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 ぱっと目を覚ましたのは深夜と早朝の間だった。二度寝してやろうと思ったが、こんなに早く目を覚ますことなんて滅多にないので、押し入れから降りる。そうして、洗面所に立ってうがいをすると、案外きれいな髪型はそのままに、この時間帯の散歩に出てみようと思った。銀ちゃんはやっぱり寝ていた。
「行ってきますヨー」
 小声で万事屋の扉を閉める。かぶき町のずっと先がほんの少し明るんでいる。公園まで歩いて時計を見ると、まだ三時十八分だった。
(気持ちいいアルなー)
 そのまま公園から出ようとすると、噴水の側に人がいる。誰だろう、もう一度戻って近付いてみた。
 ある程度距離を置かなくてもそれが誰であったか理解する。
「……兄ちゃん」
 呟いた声に彼は顔を上げる。
「……うわ、神楽じゃん。何でこんなとこにいんの」
「いや、わたしこそ訊きたいアル」
「まあそうだよね」
 兄は眠たそうにあくびをすると、目を擦った。
「まあ何だっていいじゃん」
 わたしたちの間の言葉は途切れる。
 わたしはどうしてもここに兄がいるのが不思議過ぎてそこに立ち尽くしていた。
「……神楽さ、眠そうじゃん。帰りなよ」
「そんなことないアル」
「いやいや無理しないの。ほら眠そう。目閉じそうだよ」
「うるせえ」
 そんな汚い言葉遣いして、と兄が顔をしかめたとき、向こうから誰かがやって来る音がした。
「神楽。帰りな」
 さっきまでになかった強制という空気を纏いながら兄は立ち上がりとても自然にわたしを押すと、その誰かの元へ行く。わたしは兄を振り返り、何だか気になってゆっくり歩くと、兄とその人はよくわからない言葉で話しているのが聞こえた。ちょっと不安になった。
 だが、ほんの一瞬視線をこちらに寄越した瞬間の僅かな笑みは紛れもなくいつもの兄のもので、安堵してしまった自分がいた。





 それから家に帰るとトイレに起きたらしい銀ちゃんがどこ行ってたんだよと文句を言いながらソファに座っていて、早起きしたから散歩行ってたのヨと言う。ああそう、でも朝って案外危ないから気ぃつけるんだぞ、と銀ちゃんに言われて、その通りかもしれないと思った。よくわからないがあの兄と誰かの空気は怖かったのだった。


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 何かの商談している兄貴でした><
 わかりにくいですね;;



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