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(寒い)
 布団の中からくしゃみをする。ぼんやりした頭で、お腹の底から冷える日だなあと思った。ふっと吐いた息が白い。建物の中にいるのに、なんで。
(あ)
 体を起こすとわたしの部屋ではなかった。そういえば兄の部屋で眠ってしまったのだ。開いた窓の外を眺めている、兄がいる。
「神威」
 兄はこちらを振り返っておはようと言う。呑気な笑顔に寝起きの悪さも相まって腹も立ち、寒いアル、と呟いた自分の声が存外に冷たくて、それは部屋よりも冷たい気がしないでもなかった。しかし兄は気に留める様子もなく笑顔のままである。
「目が覚めてよくない?」
「早起きしなきゃいけない用事でもあるのかヨ」
「いやー、なんとなく」
 兄が笑いながら窓を閉めた。窓の向こうはまだ暗い。時計を見ると四時だった。
「早起きが好きアルか」
「目が覚めちゃったから」
「わたしは寝るネ」
 ごそごそ布団に潜り込むと兄も入ってきた。ぺったりと押し付けられた体は冷えている。
「神威、足冷たい」
「兄ちゃんって呼んだら離したげる」
「兄ちゃん」
「…………」
 わたしが拒むと思っていたのか兄はしばらく黙り込むと、やっぱやーめたと言ってぎゅうぎゅう、痛いくらいしがみついてきて離せヨとわたしは叫ぶ。兄が耳元でクスクス笑った。
「離してほしい?」
「ウン」
「まだ足冷たい?」
「ウン」
「正直めんどくさい?」
「ウン」
「寝るつもり?」
「ウン」
「チューしていい?」
「ウン。………あ」



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