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 「親父が言うにはさ、地球の日本っていう国にはね、季節が四個あるらしいよ」

 神楽はクレヨンを握って白い紙の上にひたすらぐるぐると絵を描いていたのをやめて顔を上げた。

 「雨ばっかじゃないアルか?」

 「うん。日本ではそれを梅雨って言うんだって」

 「つゆ……」

 変わった名前ネ。神楽はまた絵を描き出す。何の絵を書いているのかわからないが、肌色の部分に弧を描く黒い線があるのを見る限り誰かの顔だろう。

 「……できたアル!」

 紙を掲げて嬉しそうに笑う。
 見せてと言うと元気よく返事をして絵の説明を始めた。

 「これが定春。定春抱っこしてるのわたし。隣で傘差してるの兄ちゃん」

 後ろのはパピーとマミーヨと言っているがそこらへんはもうよくわからなかった。
 背景に家らしきものと太陽がある。

 「…晴れてるね」

 「晴れてるヨ!」

 神楽があんまり嬉しそうに言うもんだから、俺は思わず神楽の頭を撫でて言った。

 「神楽、俺といつか一緒に地球って星に行ってみようか」

 神楽はこちらを見上げておもちゃをもらった子供のようにみるみる破顔していった。

 「行く!行きたいアル!」

 いつ行くアルか、うきうきとはしゃぎだした神楽に、もうちょっと大きくなったらねと言うとじゃあ早くおっきくなりたいヨと言いながら興奮のあまりか家の外へ飛び出していった。
 俺はやれやれと外へ出ると眩しいのに気付く。

 (晴れてる……)

 「兄ちゃーん」

 神楽は水溜まりに飛び込んだりしながら手を振ってくる。
 珍しく空の機嫌がいいこんな日に、満点の笑顔でこちらを見る神楽に、何でか涙腺が弛みそうになった。






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テーマ「人外ファンタジー」
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