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 とうに冬の季節は過ぎ去ったというのに寒い、と目の前の男は体を震わせた。

 「風邪アルな」

 ぴぴ、と体温計が鳴る。見ると三十七度を超える温度だった。
 へえ、と兄は呟く。

 「夜兎だから治るの早いかな」

 「それはわかんないアル」

 電源を切って体温計を側にあった机に置くとわたしは部屋を出ていこうとする。そうすると兄の待って、という声が聞こえた。

 「水飲みたい」

 「…………」

 わざと仕方ないアルなあと言いながら水を取りに行った。戻ってくると兄がベッドにうつ伏せて枕に顔を押し付けている。うーと呟きながらこちらを向いた。
 のっそり上体を起こした兄は差し出した水入りのコップを受けとる。

 「……アリガト」







 何かが口の中に込み上げて来るのを嚥下した。



 こんな時に愛していると言いそうになる。弱っているときほど愛しいと思ってしまう。

 「神威」

 兄がこちらを振り向いて何、と言った。

 「………何でもない」

 うん、兄は頷くとあちらを向いた。コップは体温計の側に置かれていた。















 今度こそ部屋を出た。
 また引き留めてくれないか期待している自分がいる。無性に顔が熱くて思わず手のひらで顔を覆ったらあんまり冷たいのでびっくりした。




……………………………………
 無自覚兄妹ひゃっはー!






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