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吸血鬼兄とふつうの妹/そしてR18だよ!





 ずぶり と肩口に噛みつかれる熱に耐える。虫に刺されるのとはわけが違う。あんなに太くて尖った歯がわたしの肌を突き刺して、血管を破っているのだ。
「いっ……」
 しかし、痛みがあるのはその一瞬だけで、あとはうまく表現できないような、なんともいえない恍惚したようなきもちよさが身を襲う。爪先からあたまのてっぺんまで、ぎゅうっと絞りあげられるような、なにも考えたくなくなるような感覚。だから、わたしは兄がわたしに噛みつくのを、止めることができない。
「に、い……ちゃ」
「んー?」
「それ以上吸われたら、貧血になる……」
「って言われても俺、お前以外の血吸えないしねえ」
「だっ……あ、あ」
 あっけなくわたしは達してしまった。目眩。貧血。わたしは頭の中がぐるぐるする感覚に陥って、倒れそうになったが兄に抱き止められた。兄の悪戯っぽい笑い声が暗くなっていく意識の中で響く。
「そのまま眠っていいよ。もうなにもしないから」
 夢の中で、兄の声が遠く聞こえた。



 案外眠りは浅く、わたしはぱっと目を開いた。ぼんやりと重たいまぶたをがんばって引き上げて部屋の天井を見る。カーテンの閉めきられた部屋は薄暗い。兄がわたしの髪を撫でていた。血を吸われた次の瞬間に、顔を見られることはすこし恥ずかしい。
「……やめて」
 まだぐらぐらする。わたしは兄の手を振り払うように身を起こし、顔を洗ってくると言いながらベッドから降りようとしたら兄がわたしの手首を捕らえた。
「もう、血は、無理ヨ」
「うん、さっきもらったから要らない」
「じゃあなに」
「さっきのお礼でもしようかなって」
「はあ」
 兄はまだわたしの手首を離そうとしない。
「俺は知らないんだけどさ、血を吸う瞬間、お前、かなーり気持ち良さそうなの」
「……うそ」
 それは事実であるが、まさか兄にばれていたなんて思いもしなかった。恥ずかしくて、この場から逃げ出したい。そう思ったこともばれていたのか、兄はにやにやといやらしい笑い方をした。
「……放して」
「教えてよ、セックスのときみたいに気持ちいいの?」
「知らない!」
 叫んだら手首から手を放された瞬間、肩を掴まれベッドに押し付けられる。
「いきなり、……やめろ、ヨ、う」
 兄がわたしに馬乗りになる。どんなに抵抗したって力じゃ兄に敵わないのは知っているので、絶望的な気持ちになった。あー、もう、諦めるしかない。兄のしなやかな指先がわたしの頬から髪にかけて滑り込み、鼻先に口付けられる。
「や、まだ顔洗ってな」
「気にしないの」
 きっとべたべたしている寝起きの肌なんかに触られるなんて苦痛でしかない。しかし兄は構わずわたしの唇を塞いだ。
「……っふ」
 酸素を求めて開いたわたしの唇の隙間に、兄の舌が滑り込んでわたしの口内をなぶる。ぞわぞわぞわと不快のそれとは違う鳥肌が立った。馬鹿になる。兄は確実にわたしを捕らえて引き摺り落とそうとする。
「や、め……」
 寝間着をたくしあげられ胸が露出する。その上ズボンとショーツを同時に膝まで下ろされ、わたしは霰もない格好にされてしまった。慌てて膝下のズボンを掴もうとしたら、兄の膝がわたしの膝を割って閉じないようにしたのでわたしは兄を睨み付ける。
「なにその目」
「……わたし、って、なに」
「え?」
「わたしは兄ちゃんのご飯でおもちゃアルか」
「……なに言ってんの」
 兄は親指を舐めると、わたしの乳首を撫でるようにしてぬるぬると擦った。甘い痺れが脳を刺す。わたしの意思に反して立ち上がったそれを、兄は摘まんだりくりくりと扱きながら、わたしの額に散らばる髪をどけて、耳元で囁いた。
「愛してるよ。たぶん、誰よりも」
 たぶん。頼りない返答に憤慨して、わたしは兄を押し退けようとしたがそのまま耳を舐められて気の抜けるような声が出てしまった。
「や、ふあ、あ……」
 首筋に舌が下りて、兄の指先はわたしの腹部を撫でると開かされっぱなしだったわたしの足の間に到達する。ぐちゅりと水の音がして、兄の笑い声が聞こえた。
「あは、濡れてるねえ」
「……っ」
 わたしは顔を背けて泣きたいのを堪える。兄は楽しそうに親指でわたしの陰核をこね回しながら人差し指だか中指だかを膣に押し込んできた。思わず甘い吐息が漏れてしまう。わたしの体は知り尽くされてしまっている。兄はわたしの耳元に顔を埋めながらぼそりぼそりと囁くように言った。
「神楽は俺に無理矢理されてるんだから、開き直ればいいんだよ」
「やっ、だ……やだ……」
「……何をそんなに怯えてるの」
 言いながらまた唇を塞がれる。さっきよりも深く。ちゅくちゅくと水の音がして、舌を吸われる感触に身を固くした。と思ったら下半身になにか固いものが宛がわれて、はっとした瞬間にはそれが入り込んでいる。
「に、い……!」
 顔を背けたが逃れられないように髪を掴まれまた口付けられる。ゆるやかに右足が抱え上げられ、さらに深く侵入してくる兄の陰茎はわたしの膣をいっぱいにひろげて満たした。兄の器用な舌使いのせいでわたしの体はやや弛緩していたが、兄の陰茎が我が物顔で居座るそこは緊張して固くなっている。わたしが脂汗をにじませていると、兄がようやく顔を離した。
「……な、な、に」
 兄はさっとわたしの両手首を掴むと、ゆるゆると腰を引いて、ずっと挿入した。わたしの喉から思いがけず泣き声とも笑い声ともつかない声が出て、口を手で覆いたくなったが兄がわたしの手首を纏めているので動けない。わたしは顔を見られたくなくて、でも隠す術が見当たらないまま、兄が動き出すのを甘受するしかなかった。
「あ、ア、あっ、あ、は」
 徐々に速くなる兄の抽迭が、わたしの膣のほどけ具合を語っているようだった。情けなくて心がくるしい。でも体は涙が出るほど気持ちよかった。わたしは顔を隠したかったことも忘れて、兄の動くのに身を任せてひたすら揺られていた。目からも鼻からも口からもなにか液体が垂れ流れている。気にしている余裕はない。
「やっぱ神楽、血吸われてるときとおんなじ顔、してる」
「な、あ……」
「どっちが気持ちいいの?」
「やめ、てっ、うあ」
 わたしの陰核をくちゅくちゅと弄びながら、兄はおかしそうに笑った。
「こっちの方がいいのかなあ、神楽、どう? もういっちゃうの?」
「だ、れっ……が!」
 その瞬間、さっきまで到達しなかった深いところまで挿し込まれ、鈍くて重い快感がどっと押し寄せてきたのでわたしは本当に達してしまった。あそこだけではなく、全身がびりびりと跳ねるような、感じたことがないものだった。
「……! あ、……」
 わたしは兄に血を吸われたときと同じように、ふっと意識が抜けて、すーっと消えていこうとするのを感じていた。そうして極めて薄い意識のなかで、残された本能が兄に揺さぶられる快楽を追い続けようとしていたが、やがて堕ちた。





 次に意識がはっきりした瞬間わたしは、洗面台へ向かい、鏡の前に立った。首筋の歯形を撫でる。撫でて絆創膏を貼る。くらくらした。貧血と疲労に未だに翻弄されている。
「おはよう」
 兄が眠たそうにわたしの後ろにやって来てそう言った。
「神楽」
「…………」
 わたしが兄を無視していると、兄の困ったように笑う声が聞こえた。
「朝ごはん作ったげるから、拗ねないでよ」
 兄はわたしを置いて台所へ消えていった。わたしは兄の作るご飯が好きだから、結局いつものようにほだされる予感に嫌気が差しつつも、居間へと向かう。またきっと、すぐに同じ夜を迎えることになるのだろう。



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