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 ヒトはさ、愛されたがるしどうやったら愛されるのか試行錯誤するみたいだけど愛する方もなかなか難しいんだよね、どのくらいが丁度なのかてんで推測も出来ないし足りなかったり行きすぎたりする。お前はヒトをうまく愛せるけど愛されるのに悩んでるみたいだね、でも俺は両方うまくいかないんだ
「だからこんなことするアルか」
「ごめん」
 妹は妹自身の腕で傷だらけの体を抱き締めながら俺を見上げた。
「もう殴らないって前は言った」
「ごめん、神楽、大切にしたいのに」
 俺の手も腫れている。俺も痛いがこれ以上の痛みを妹は負っている。何でこんなことをしてしまったのか今さら悔いている、やってしまったあとのくせに心がひりついて、痛い。
「俺、ちゃんと優しくしようとしてる、お前のことは大好きだよ神楽、でもさ、わかんないんだどうすればいいのか」
 妹は俺をじっと見つめると、ふと笑った。泣き出しそうなのを堪えるような笑みだった。つまり、
「この傷も痛みも、兄ちゃんの愛情でしょ。わかってるヨ」
 愛することが上手な妹。俺も同じ分だけもらったはずなのに、父の母の、愛情を溢れるほど注がれ満たされて育ったその無垢な笑顔が憎かった。なのに愛され方がわからないと言い、しかし妹は俺のすべてを受け入れようとする。だから俺は妹の愛し方がわからない、なにも知らない俺に向けられる妹の目は、美しすぎた。



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