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 兄の笑顔にわたしは凍りついた。



 久々に兄と出掛けていた。バイトで金入った(バイトってたぶん喧嘩)から今俺余裕あんのと言うので服を買ってもらい雑貨屋を覗いてCDショップでCDを買った後ちょっと小腹が空いたので近くのスタバに入っている。ぐるりと首を捻ると一人でパソコンしている人や男女のカップルや友達との会話に花を咲かせているひとやらたくさんいた。
「あ、あの人かっこいいネ」
「どれ」
 店の端でヘッドフォンをして本を読んでいる男性がいる。細面の綺麗な人だった。
「なに神楽、あんなのが好みなの」
「んーん。かっこいいと思うだけヨ」
「……ふうん」
 兄はコーヒーを嚥下する。
 わたしは兄ちゃんに好みな人はいないのか訊いてみた。
「俺ー?」
 困ったように兄は目を細めるとそうだねえと呟くとわたしを見て口を歪めた。
「お前かなあ」
「え」
 口を付けかけたバニラフラペチーノを噴き出しそうになった。冗談めかしてわたしはふざけんなヨと言ったが兄は依然なにも言わず表情は変わらないままである。ひやり背筋に冷たい汗が伝った。
「……う、そでショ」
 喉が鳴って言葉が途切れる。ふつふつと肌が粟立ってきていた。
「ね、神楽」
「……なにアルか」
 兄が緩やかに目を開いた。
「冗談だと思った?」
 わたしは口を開けかけて、でも声は出せなかった。
「お前のこと好きだったんだよ」
「……」
 わたしはすぐに立ち上がり店を出なければならない気がした。思ったことを実行せねばと足に力を込めたが思うように動かない。それでも泣き出しそうになりながら店を出ると兄が追い掛けてきてわたしの腕を掴む。兄の顔が間近にあった。
「放して」
「俺は」
 空はもう橙から藍のグラデーションになっていて、ぼんやりと月が見えた。その光景がますます心臓の鼓動を早くする。いつの間にか兄の目がわたしの目にくっつきそうなところにあった。

「俺は、お前としたいよ」

 目前の真昼のような青が閉じる。夜が始まろうとしている。
「やめ……」



 わたしの唇 が





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