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 父や母の愛情は家族愛に含まれ兄からのもそうだと思っていたがそうでなく、なぜそうだと気付いたのかといえば兄がわたしに入るという行為は普通家族とはしないということを知ったからである。わたしの年は一桁で、だから父や母がわたしにそういったことをしないのが純粋にずっと不思議であったし兄だけが本当にわたしを愛しているのだと思い込んでいたわたしは本屋で偶然立ち読みした雑誌により兄にされていたことが異常であることを知ったのだ。しかし思い返せば嫌悪感が湧いたことはなかった。





 定春を連れて散歩していたら、遊び仲間の同い年ぐらいの友人が、実はわたしのことを好きだったと拙い告白をしてきた。瞬間わたしにこう告げたのが兄だったなら、と思ってしまったわたしはなんとなく目の前に白けた気持ちになったけれどそれをおくびにも出さないでごめんなさいを言った。一人の帰り道、少し時間が経ってもやはりドラマのようにどきどきすることはなく、ぼんやりとしたまま万事屋に帰ると銀ちゃんと新八が迎えてくれた。おかえりと言われただいまと返す。ああ家族みたいだなあと思った。なるほど確かにわたしはこの人たちとかつて兄とした行為をする気は起こらない。もしもこの人たちに好きだと告げられてもどきどきすることはない。恋愛沙汰に多感な年頃であるはずのわたしがどうしてこんなにも冷めきった気持ちなのだろう。

 「今日告白されたアル」
 「嘘だろ」
 「冗談だよね」

 本当なのにひどいヨ、みたいな感じに昼間を会話のネタにでもして笑えるほどわたしは他の誰かから愛されるということに無頓着なのだとわかった。あの頃わたしだけを見てくれたのは他でもなく兄だった。そんなあの頃を鮮明に思い出せるわたしはこれからきっと他の誰かの愛を知ろうとしないで兄だけの感触を思い一生を終えるのだろう。怖いから、今の兄に会ってみたいとは思わない。悲しいが、寂しくはなかった。



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