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幼少
よく秘密基地と称して遊びに行っていた廃墟に夕方遊びに行くと取り壊されてただのコンクリートになっていた。いまさらどうしようもないけれど、悲しくてひたすらそのコンクリートをぺちぺちひっぱたく。兄が仕方ないね、とぐずるわたしの頭を撫でた、仕方なくないとわたしはまたぐずる。
「まあまあ、また見つければいいじゃん」
「こんないい場所もうないアル!」
「ないなら作ればいいじゃん」
「……作る?」
「うん、別にコンクリートじゃなくてもいいわけで」
兄に手を引かれそこを離れる。わたしはまだ悲しんでいるが、また明日にでもどこか探せばいいか、と思えるまで落ち着いていた。ぺたんこの靴底がぺたぺた音を立てる。すこしおかしくて笑ってしまった。
「あ、ちょっと本屋行っていい?」
「何か欲しい本でもあるアルか?」
「うん」
兄に着いていくと建築関係の棚に辿り着いた。そこまで本格的に兄が考えていたなんて、でもわたしは、兄が本を見たくらいでぽんと隠れ家を作れるほど器用じゃないのを知っている。
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恋愛お題ったー様より
(夕方の廃墟)(ひっぱたく)(本)
恋愛関係ないし無理矢理感が否めない件