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「何やってるの?」
 目を覚ました青年に馬乗りになって、少女は青年の首に手をかけた。
「首を絞めてやろうかと」
 正直に殺害予告をする少女に、青年は穏やかに諭した。
「そんな力じゃ、僕は死ねないよ」
 少女を乗せたまま、青年は上体を起こした。
「せめてロープを使ってくれ。なかったら、刃物の方が確実かもしれない」
 青年は少女の手を脈打つ首筋に添わせた。ここを狙えと暗に伝えている。さらには、隣の部屋にあるキッチンの包丁のしまい場所まで伝えてくる。
「相変わらず、親切な他殺志願者だわ」
 しかし、少女はキッチンに向かわず、青年の膝の上に乗ったままだ。たとえ、キッチンに行けたとしても、本当に青年を殺す覚悟は芽生えていない。
 青年は少女の柔らかい髪を撫でながら、耳元で囁く。
「はやくしてくれないか」
「自分で死んでよ」
「嫌だ」
「大嫌いよ」
「わかってる」
「ねえ、私のことが好きなんでしょう」
「知っていてくれて嬉しい」
「目覚めるたびに、あなたは言うのだもの」


――好きだよ
――お願いだから、僕を殺してくれ
――約束したら、君の足枷を外すから

03/07 18:54
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