校門前が見える距離になると、赤・黄・青?の鮮やかな信号機がこちらに走って来た
『エドガーァァァァ!!!』
南雲くんが私から隠すように守を抱き上げた。
『守!何もされなかった?大丈夫?タラシに何もされてない?』
『…失礼な事を言わないでくれたまえ、私は英国紳士に恥じない行為をしたまでさ』
静かに睨んでくる凉野くんに挑発的に言えば、空気を破るように守が言葉を発した
『エドガー、道案内してくれた。いいやつ!』
そう言って、守は南雲の腕の中で傘をそれぞれに渡す。
『守、今回はまだマシな部類だったけど、本物が出たらどうするんだい』
『マシな部類とはなんだ、本当に失礼だな君たちは』
さらさらと毒を吐く涼野は、傘を握りながら守から視線を外さないまま私に嫌味をいう
『……傘、いらなかったか?』
『そう言った訳ではない、1人では危ないと言っている』
凉野くんが思い出したように傘を差す、彼は妹にもあんな態度なのか
『こんな雨の中1人で冒険したんだ、男なら礼の一つでも言うものだと思うが』
『…確かに、エドガーにも一理あるね。守、ありがとう』
『…!』
へにゃりと笑った守の顔はやはり愛くるしい
『冷えただろう、早く帰ろう』
南雲から守を奪った凉野くんはスタスタと歩き始めた。
『あっ、てめえ!』
南雲くんが奪取しようとしながら着いていく
『エドガ、ありがとなっ!』
凉野くんの肩越しに守が一生懸命手を振ってくれたのに小さく返す。ああ、可愛らしい。
『…さて、そんなに睨まれても困りますね』
残った亜風炉くんが射殺さんとばかりに睨む
『先ずはお礼だね、守を届けてくれてありがとう、うちの子はとても可愛いからね。君がいなかったら今頃どうなっていたか』
『ええ、本当に可愛いですね、是非今度のお茶会にお呼びしたい』
ばちばちと火花が散る
『悪いけど、誰にもやる気はないよ』
『おや、過保護な兄は嫌われますよ』
『残念ながら、守と僕たちは誰も血縁がない。』
亜風炉くんは自虐的にも、自信ありげにも見える笑みで笑った。
『…、』
『まあ、簡単にはやらないよ、って事だよ』
彼は長い金髪を揺らし、守が持って来た傘をくるくると回しながら去って行った。
『成程、一筋縄ではいきそうにないですね』
エドガーは溜め息をつき、守と歩いて来た道を引き返した。
雨は止まないが、今日は少しだけ、好きになれた。