ざぁざぁと雨が降っている、生まれた国ではいつも天気が悪かったからあまり苦にならないが、それでも雨はあまり好きではない。

英国の雨と違い、日本の雨は傘がいるから厄介だ

早く家に帰って温かい紅茶でも飲もう、そう考えながら帰路を急いでいると、奇妙な光景をみた

オレンジのレインコートを着た子供が、自分の背丈より高い傘を3本引き摺らないように抱えて一生懸命歩いている

心臓の辺りが抉られるように感じた、愛しい、愛でたい、そんな感情


『どちらへ行かれるのですか?』

気が付いたら話し掛けていた、目線を合わせるようにしゃがみ、レインコートは着ているが雨に打たれ続けている小さな身体を自分の傘で遮った。

子供は驚いたようで、少し眉を潜めて私の顔をみた

『失礼、私の名前はエドガー・バルチナス』

『…守、』

『守。いい名前ですね。ところで、こんな雨の中どこへ行くのですか?』

『…お迎え』

これは警戒されている、まぁ知らない人に注意するのは当たり前か

『宜しければ、このエドガーがお供いたしましょう』

『…いい。知らない人に着いて行くなって照美たち言ってた』

『照美?もしや…、』

照美、名前だけ聞くと女性でもおかしくないが、"たち"と言った

『もしかして、亜風炉照美の所へ行くのですか?』

『…!』

吃驚したように守の瞳が開かれた、図星だろう。

『3本、という事は、凉野くんと南雲くんも忘れたのですね』

3人がルームシェアしているという話は聞いたが、こんな可愛い子供がいる事は知らなかった。

『…3人知ってる?』

『はい、…お友達ですよ。それに制服も同じでしょう?これも何かの縁、学校までお供いたしましょう。1人は危ないですし』

『…』

暫く何かを考えていたが、小さく頷いた。

『よろしくおねがいします!』

『傘を持ちましょう、重たいでしょう?』

『大丈夫!』

頑なに拒否され、仕方なく守の足取りに合わせる。

カコカコと携帯をいじり、3人に校門前にいるようにメールをする

『感心ですね、わざわざ届けに行くなんて』

『照美たち風邪ひくのいやだから』

ショタコンの性癖はなかったが、目覚めそうだ。

『偉いですね、きっと喜びますよ』

『本当?』

『はい、守くんが一生懸命運んでくれたのですからね』

『!』

そう言ってあげれば、初めて笑った。太陽が笑うようだった。



うん、いいかもしれない。






目覚めたエドガー氏
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