『ふーすけ』
『…』

『おきる』
『…』

隣の部屋で守が凉野を起こす声が聞こえた。

『ふーすけ』
『…』

守が何度も呼ぶが、ヤツが起きる気配はない。

『ふーすけ』

しかし守も懲りない、何回やっても学習しないからか、何度も何度も呼ぶ。

『ふーすけ』

守が可哀想になり、俺はベッドを出る


『ふーすけ、起きて』

ガチャ、と凉野の部屋の扉を開くと、守の小さな背中が見えた。

『守、先に降りていいぞ』

『!晴矢』

『俺が叩き起こしてやるからよ』

『ん!』

ひょい、とベッドから降りた守はトタトタと部屋を出て行った。

『……起きてんだろ』

俺が入って来た時に眉を潜めたのがみえた。

『余計な事を』

案の定、むくりと起きた凉野

『起きてんなら起きろよ』

『馬鹿か、守が困った顔するのをみるために決まっている。』

飄々と言い放った凉野はベッドから降りた。

『鬼畜野郎』

守が可哀想だが、それがコイツの愛情の伝え方なのかもしれない

『誉め言葉だ』

ふ、と勝ち誇ったように笑う凉野、……やっぱコイツ楽しんでるだけだ。

 


『風介は?』

『晴矢起こす』

トタトタとリビングに戻って来た守は、椅子に座ってホットケーキを眺めた。

『(困ったものだなぁ)』

守にココアを渡し、二階を見上げる。

『今日は学校が早く終わるから、それまで家にいてね』

『うん』

僕たちは中学があるから、その間守は家で留守番だ。

1人で留守番は可哀想だけど、守は不満を漏らさない。

『(強いのか、我慢強いのか、…言えないのか)』

そんな事を考えていると、2人が降りて来た。

『ホットケーキが冷めてしまうだろう、早く座って』

『げっ!時間やべぇ!!』

晴矢の叫びで時計をみれば8時、家を15分には出ないと間に合わない。

…慌ただしい朝になりそうだ。

守が半分食べていないうちに、僕たちは席を立ってバタバタと準備を始めた。

そんな様子を見ながら守は黙々とホットケーキを食べていくそろそろお手伝いさんでも雇おうかな、たまに瞳子さんが来てくれるが、やはり寂しい思いはさせたくない。

時計は無情にも20分、全力で走らなければ。

ドタバタと玄関へ雪崩れ、見送りに来た守に手を振るのもそこそこ、家を飛び出した。

『ごめんね、守!行って来るよ』

『キッチンには入るんじゃないぞ』

『じゃあな』


バタン、扉が閉まって鍵をしたのを確認して、3人で全力疾走

帰ったら思いきり優しくしよう、そんな事を思いながら、走る速度を上げた。

頭上の空が灰色だという事に気付かないまま





 
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