『ふーすけ、アイス』

私が風呂上がりにアイスを食べていれば、守が膝に乗って羨ましそうに見る。

『…冷蔵庫に入っているだろう』

テレビのリモコンを変えながら言うが、守の身長ではアイスの位置に届かないのだ。

しかし今は動きたくない、すごく動きたくない気分

『…食べ終わったら取ってやるから、待て』

『ん』

大人しくなったが、未だ守の視線はアイス

『……』
『…』

『……』
『…』

痛い、無言が逆に痛い

『くっ』

南雲は風呂で亜風炉は二階、助けはない。

『…』

辺りをキョロキョロと見渡して、一応2人がいない事を確認する。

私が今食べているのかカップのバニラアイス

『…口を開けろ』

『?』

命令すれば大人しく口を開く守、純粋な所を気に入っているが少し不安だ。

私はバニラアイスを掬い、守の口にスプーンを突っ込む

『んっ!』

守がキラキラした瞳でアイスを咀嚼する、そしてそのままへにゃりと微笑む。

私はこの笑顔に弱い、私たちは、でもある。

『ふーすけ、ありがと』

『っ、』

心臓が高鳴った、

『た、大した事ではない』

何を動揺したのか分からないが、私はまた雑誌に目を向ける。

……交互にアイスを食べながら。



『ふーすけアイスっ!』

バニラアイスがなくなると、待ってましたとばかりに守がソファーで跳ねる。

『分かったから、暴れるんじゃない』

そう言えば、競歩のような走りで冷蔵庫に駆けて行った。変な所で頭が回るものだ。

冷蔵庫は守より遥かに大きく、その前でアイスの位置を守がペチペチと叩きながら私を待っている

『何がいいんだ』

『いちご!』

ガサガサと冷凍庫を漁り、目当てのものを取り出して守に渡す。

『ありがとう!』

守はいつの間に取っていたのかスプーンを持って笑った。

『食べるぞ!』

アイスを持っていない手で私の裾を引っ張ると、守はまた駆け出した。

『!』

先ほどと同じようにソファーに座り私の膝に乗ると、守はイチゴのアイスを開けた。

甘酸っぱい匂いがした。

『ふーすけ、口開ける』

『…私はいい、さっき食べた』

『さっきはふーすけくれた、次は俺!』

目の前にはイチゴアイス

私は再び辺りを確認すると、目の前にあるスプーンをくわえた。

『…うまい』

亜風炉は"教育上、話す時は柔らかい言葉で"とか言っていたが、そんな余裕はない。

『2人で食べると美味しいね!』

にこっと笑った守の顔に、私の頬も弛んでしまった。





(随分楽しそうだったじゃねーか)
(なっ、み、みて)
(うん、デレデレしてる所をばっちりね)
(!)



 
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