次の日にはいつも通りに戻っていた。
朝食を食べて、天気予報をチェックして、守に言い聞かせて、いつも通りの朝だった。
―――昼、稲妻高校
「へえ、君たちに弟がいたなんて知らなかったよ」
エドガーが言ったわけでもなく、昨日守を目撃した人間が多数いたらしく学校に着くなり質問攻めにされた。
食いついたのはヒロトくんだった。お日さま園にいた守を知らないから、興味があるのだろう。しかし、南雲くんと涼野くんが嫌悪感丸出しで否定する。
数人で会話していたのにいつの間にかクラス全員が話に参加している。
「いまは1人で家にいるのか?」
風丸くんや吹雪くんも興味があるらしい、南雲くんはまだヒロトくんと睨み合っている
「うん、留守番を頼んでいるんだ」
「それは寂しそうだな、学校に連れて来れないだろうか」
人の良さそうな源田くんの提案に佐久間くんが馬鹿らしいと一蹴する
「(…寂しそう、)」
その言葉に心臓が反応する。寂しがらせているのは承知している、しかし、守を外に出したくない。
「…そうだね」
ぼんやりと返事をすれば涼野くんも同じ表情をしていた。
―――昼、
「おじゃましまーす」
瞳子姉さんに頼まれて、ルームシェアしている部屋に野菜と守の昼ご飯を届けに来た。中学は休みだからだらだらしてたかったけど、守に会えるならまあいいか
靴を揃えると、トタトタと足音。少し確認した守が、俺を認識すると飛び付いて来た。
「リュウジ!」
「リュウジ兄ちゃんだってば、おっ!また大きくなったな」
「リュウジー!」
片手で抱き上げ、リビングに進めばはしゃぐ守がケタケタと笑っている
「お腹は空いてる?」
「うん!」
「瞳子姉さんがハンバーグ作ってくれたから、食べようか」
「ハンバーグ!」
守を一度下ろせば、本を読んでいたらしく床には童話が広がっていた
「すごいな守、本を読んだの?」
「うん!本を読んだら照美たち喜ぶ!」
「そっか」
本を読んだこともだが、あの3人は守が何かするのが嬉しいのだろう
守に言っても分からないだろうから、大人しく昼食を温めることにした
温めている間、守は俺に読み聞かせをしてくれた。可愛いなあ!
―――
「ふざけんな!」
「いいじゃないか、お日さま園の子なら俺の弟でもあるでしょ?」
「馬鹿が移る」
「大丈夫大丈夫、君たちとそう変わらないからさ」
学校帰り、ヒロトくんが家に来ることになった。ニコニコと読めない彼には何を言っても無駄だろう、2人は抵抗するが僕は大人しく受け入れることにした。
「(本当は嫌だけど、いつまでも言っていられない…)」
「ただいま…、あ?」
今日は何だか早く家に着いたなあ、なんて思っていると一番に入った南雲くんが疑問系になった
何事かと思えば見慣れない靴、瞳子さんではなさそうだし、誰だ?
「おかえり!」
「おじゃましてるよ、あれ?ヒロト」
ちょっとした議論をしていたら、守を抱えた緑川くんが現れた
随分守は懐いているようで、いつもなら飛んでくるのに今日は緑川くんの腕から出てこない
少し、嫉妬。2人も同じらしく少しだけムッとしていた。
「……きみが、円堂くん?」
ヒロトくんがふるふると震える。どうかしたのかと心配する手前、目にも止まらぬ早さでヒロトくんは守に抱き付いていた。
「かわいいよまもりゅううう!!!」
緑川くんに抱っこされている守に飛び付き、頬摺りするヒロトくんは学校で見るヒロトくんではなかった。
「げっ!!!離れろよヒロト!!!暑苦しい!!」
「貴様、闇の冷たさを知りたいらしいな…!!」
「だから会わせたくなかったんだ!!」
お日様園のメンバーにボコボコにされるヒロトくんから守を奪い返したが、守は未だに何が起こったか理解できていないようだった。
「……大丈夫かい?」
「……う、うん…」
とりあえず、これで外には怖い人がいることを分かってもらえただろう。