仁王+幸村


今日は親の都合でお弁当はなし、な日。変わりにと渡されたお金をポケットに入れて購買に向かえばチャリチャリと軽快な音が鳴る。が、しかし。購買について行列の奥にある売り場を見れば、俺のお気に入りのパンがなかった。

「なん、じゃと…っ」

唖然と口を開けて本来ならパンがあったスペースを凝視すればおばちゃんが「ごめんねぇ、売り切れちゃったの」とあんまり誠意のない謝罪が降ってきた。ちょっと待て、俺はこのパンのために四時間も長い長い授業を受けてたんじゃ。とは言えず、無言で頭を下げて行列から抜け出す。あ、今足踏まれた。最悪。

「あーもうやってられんしゃい」

校舎を出て裏庭に入り、地面に落ちている小石を蹴り飛ばす。教室には戻る気力がない。お腹からは切ない音を鳴らして俺に空腹を伝えてくる。なんか切なくなってきた。その場にしゃがみこみ、足元にいる仕事中の蟻を見つめながら時々通行の邪魔をしてみる。余計虚しくなってきた。

「何やってるの?楽しい?」

聞き慣れた声に顔をあげれば太陽の光をバックに幸村がいた。ちょっと眩しい。

「楽しい…」
「そう。あ、暇だったらちょっと俺に付き合ってよ」

ガサリと俺の目の前に購買の袋を見せる幸村を精一杯睨み付ける。だってお腹空いてるのに目の前にご飯ちらつかされるなんて嫌味じゃろ。

「違う違う。嫌味じゃなくて」
「え、なんで分かったんじゃ」
「口に出てるよ」
「あ、」
「うん」

幸村はくすくすと笑いながら購買の袋から何かを取り出して俺の膝の上に乗せた。何かと見れば、先ほど購買で売り切れになったパン。ビックリして見上げれば少しどや顔の幸村がいた。

「さっき仁王が購買でこのパンのスペースを凝視してたからね。欲しかったのかなーと思って。最後の一個をとったのは俺だからさ」
「え…じゃあ」
「あげるよ」

買いすぎたからね、と言う幸村が少し神様に見えた。



text


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -