丸井+(幸村)


カチ カチ カチ カチ

時間の針は小さくも時を刻む。今ここ、教室でシャーペンが紙を走る音が溢れている。チラリと隣を見れば必死に解答欄に書き込むクラスメート。ごくりと唾を飲んで時計を見上げればテスト終了まで30分以上ある。手汗をズボンで拭いて少し湿った指先で先ほどから何度もしている解答の確認をする。けど頭には入ってこない。つか。

なんで俺だけこんなに早く解き終わってんだよ。

やばい。なんで俺だけこんな早くに終わってんだ?そんなに時間がかかる問題ではないだろぃ?ちょまじお前らやめて。誰でもいい、誰かあと一人でいいんだ。問題を解き終わってくれ。
なんて願いも虚しくシャーペンを置く音さえ聞こえない。もしかしたら俺は解き方を間違っていているかもしれない、と問題用紙と全部埋まっている俺の答案とを見比べる。やばい、合ってる気しかしない。
俺がここまで自信があるのは理由がある。いつもなら学校のテストなんて仁王とどちらが低い点数を取れるかと競い合うほどに適当なものだと考えていた。が、ついに赤点を三発叩き出してしまい雷、いやメテオが落ちた。幸村くんの。

「次の期末、赤点は絶対にとるな。1教科だけでいいから90点以上とれ。いいな」

たしかそう通告された時、恐怖で無意識に歯がカチカチとなっていた気がする。情けなくも俺は腰を抜かし、「は、はひ…」と半泣きで幸村くんと約束をした。
赤点はとらない。1教科だけでも90点をとる、と。

俺はそれから必死に勉強をした。90点以上をとる教科を何にしようかと考えた末に俺が目につけたのは数学だ。元より数学は嫌いじゃないし今回の範囲ならいける気がした。部活が終わったら家で馬鹿みたいにハチマキまでつけて復習や予習をした。しかし母は父に相談するわ、仁王は風邪薬を持ってくるわと周りの人間は俺を本気で心配した。けれど俺は必死に数学を勉強する。理由はただ一つ。

幸村くん怖くね?

ふらりと意識が現実に戻ってきてもう一度時計を見上げればあと20分で終わる。やっとまた10分終わった。よし、これを繰り返そう。

カチ カチ カチ カチ

相変わらず教室にはシャーペンが解答欄に走る音しか聞こえない。



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