仁王+丸井+(幸村)
「今から作戦を開始する」
ブン太の言葉に息を潜めながら深く頷き、俺はある場所へ足を進める。そうだ、俺は今見つかってはならない犯罪者、ミッションガールズハニーの一員である。誰よりも光を浴びず陰を生きる、それが仁王雅治だ。
「仁王お前うるさい。見つかったらどうすんだ」
「すまん」
木登りは得意じゃないが、俺はどうしてめ登らなきゃならない理由がある。それは己の欲を満たすため、好奇心に身を任せ無謀とも言える挑戦、そうそれがミッションガールズハニーだ。
「だから仁王うるせえって!バレちまうだろ!」
「ブンちゃんもうるさいぜよ」
簡単に説明させてもらおう。俺たちはただ女子更衣室を覗こうとする清く正しい中学生だ。男子更衣室とは縁のない清潔感溢れる室内に女子が着替えるのだ。女子更衣室、名前を聞くだけでフローラルな香りがしそう。そんなヘヴンといえる場所を俺達はしっかりと目に焼き付けるべく二階にある女子更衣室を校内で一番高いと言われる木から女子更衣室を覗く、そんな計画。
「部活までサボらせてもらってんだ。下着姿くらい見せてもらうぜ」
「ブンちゃんなんか変態みたいじゃき。きーもーいー」
「双眼鏡貸さねぇぞ」
「すまん」
二度目の謝罪。俺より高く登って双眼鏡片手に舌なめずりするブン太の姿は変態にしか見えない。どう?見える?と変態に下から聞いてみたけど無視された。
「なぁそろそろ俺にも見せてくれんかのぅ。なぁ」
「いや仁王ちょっと待て」
「好みの女子いるの分かったから。またC組の上原さんか?」
「え、や、あれ幸村く――」
パリンッ
うちの部長の名前をなぜ女子更衣室の覗きをしとるお前さんが言うんじゃ。なんて考えるより先にブン太の双眼鏡が割れた。一気に体の熱は下がり、熱くもないのに汗が吹き出る。やばいやばいやばいやばい、まじでやばい。
「ちょ仁王やばい。頼むから早く降りて!」
「わわわわかっとるから、おち、落ち着きんしゃい!」
「お前も落ち着け!」
焦りすぎて簡単に降りれるはずの木の幹が降りれない。それはブン太も同じようで服を枝にひっかけたのかカッターシャツは破れていた。
無事に地に足をついた俺達は、ガタガタと震える足を必死に動かして部室に走る。あまりの必死さに通りすがりの生徒達に注目を浴びていたけど気にしてられない。部室のドアを思いっきり開ければ予想通りの人物に体が固まった。
「やぁブン太と仁王。どうして遅刻なんてしたのかな?」
幸村は組んでいた腕をほどき、女子更衣室の鍵をちらつかせた途端、俺達は床にキスするいきおいで土下座をした。
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