睦月様から相互記念に

仁王+幸村


パコンパコンとボールを打つ音をBGMにドリンクを飲みながら、コートで楽しげにボールを打つ我らが部長を見る。

女子達の「幸村くーんっ!」「キャーッカッコイー!」「王子さまみたーいっ!」とかなんとかハートを撒き散らしながら騒いじょる声を聞いてふと考えた。
『幸村は何故あんなに人気があるのか』と。
まあ俺達テニス部は全員人気があるんじゃが、幸村の人気は群を抜いている。女心はよく分からんが、正直それは奴の本性を知らないだけであって、実際の幸村は『王子さま』だなんてそんな良いもんじゃない。何も知らないって幸せモンじゃなぁ。とか考えながら再度じっと幸村を見た。

幸村精市。我が立海テニス部の部長。通称「神の子」。成績優秀。趣味ガーデニング。笑顔が似合うどこか儚げな好青年。


まあ世間の認識としちゃこんなもんじゃろうけど、実際は真田に悪戯しかけたり、気まぐれに五感奪ったりと危険人物。

正直予測がつかなすぎて怖い人物でもある。

周りからの人望も厚いし、尻尾を掴ませないだけじゃないか、と思考を締めくくろうとしたときだった。

「休憩、まだなんだけど。」

にこにこと笑う幸村が目の前にいた。いつの間に。

「…え、お前さん今ラリーしてなかったか?」

「とっくに終わったよ。」
と返され、ふとコートを見れば地に伏せている真田の姿を見つけた。え。まさか

「……五感、奪ったんか…?」

「うん」

悪びれもせずさらりと答える姿に危機感が募る。

「ねえ仁王?」

「スミマセンデシタ。」

俺まだ何も言ってないんだけどなぁ、と笑う幸村を見て思わず泣きたくなる。だって目がまったく笑ってない。マジでこういう時の幸村は怖い。

「まあいいや。で、休憩まだなんだけど。」
「…ドリンク飲んでただけなんじゃが、」
「へえ?3分もドリンク飲み続けてたの?」

太るよ?とか言いながら俺を見る幸村の目はとても楽しそうに爛々と輝いている。

「…スミマセンデシタ。」
「それ二回目だよ。ひねりがないなぁ。」

ふふ、と女子曰わく『王子様スマイル』で笑う幸村に、俺の冷や汗は止まらない。やっべ、俺死んだかも。とか考えてると、幸村、いや、幸村様は恐ろしいことをのたまうた。

「じゃあ仁王、罰ゲームとして丸井のお菓子とってきて。」
「…え。」『とってきて』じゃなくて『盗ってきて』に聞こえたのは俺の気のせいじゃないだろう。
ちょっと練習に参加しなかっただけで罰ゲームとか最悪すぎるじゃろ、てか丸井からお菓子を奪うとか無理すぎる。むしろ青学の『グランド30周!』とかのがまだマシじゃないか。

「ほら、早く。」

これこそが幸村の『YESorはい』。拒否権などありゃしない。
にこにこと笑う幸村を恨めしく思いながら、大量のお菓子が詰まってるロッカーへと俺は走るのだった。


罰ゲーム

部室に入り、いくつか菓子を拝借し、部室を出ようとすると見慣れた赤髪が猪の如く走ってくるのが見えた。

「仁王テメェェェェェエ!」

後方を見れば笑い転げる幸村。俺、今日厄日すぎない?


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睦月様より相互記念に頂きました!!

ありがとうございます!



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