「あーあっちぃ。なぁもう夕方だしもう風呂入ろうぜぃ」
「温泉があるらしいね」
「へへ、俺がいっちばーん!」

あれから海の家で何をすることもなく夕方までブラブラを繰り返し、旅館に戻った俺たちは幸村部長の温泉発言でテンションが上がる。丸井先輩と幸村部長の横を通り過ぎて着替えを片手に部屋を出る。先輩らには悪いッスけど一番は俺のもんっすよ!

「待ちんしゃい」
「ぶべっ!」
「仁王ナイス!」
「仁王せんぱ…」
「悪いが…、一番は俺のもんぜよ!」

部屋を出たら勝ちだと思っていたがもう一人やっかいな先輩を忘れていた。足をかけられ、顔面からダイブ。なんかすげぇ滑ってね?一メートルは滑ってね?すっげぇ皮膚が痛いんだけど。
顔をおさえながら体を起こせば仁王先輩が丁度俺の横を走り抜けた。

「ふはははは、ブンちゃん、幸村、赤也すまんのぉ!」

普段ならあり得ないテンションで仁王先輩は高笑いをしながら一度も振り返らずに行ってしまった。俺も遅れをとってはならないと急いで立ち上がる。

「仁王先輩ちょ、ぶべっ」
「ちっくしょおお!」
「丸井せん…いでっ」
「あそこまで高笑いされると闘争心が燃えるよね」
「幸村ぶちょ…」
「お先」

わざわざ、わざわざ俺を踏みつけて仁王先輩を追う幸村部長と丸井先輩はもはやただの中学生にしか見えない。うんまぁ中学生だけど。



結局、一番は仁王先輩で次に幸村部長、丸井先輩に最後は可哀想な俺。

「温泉で泳ぐって漫画で見たんスけど、そんなに広くないんスね」
「漫画だからだろぃ」
「漫画だからね」
「漫画じゃからのう」

あー疲れた。今日は朝から仁王先輩は遅刻するし、結局クーラーに当たってないし、海には入れなかったし。
ため息をはいて海に反射している夕日を見ればでもやっぱり来てよかったとも思える。

「仁王、髪の毛どっちが早く洗えるか勝負しようぜぃ!」
「また負けても知らんぜよ」
「てめぇ、俺がどれだけ光速で洗えるか知らんだろぃ」

ざばぁ と湯船から立ち上がった丸井先輩と仁王先輩に、いや早く洗ったらダメでしょ、と心の中でツッコませてもらう。残った幸村部長は湯の周りに置いてある石に頭を乗せながら俺に話しかけた。というかさっきから気になってる事があるんスけど。

「赤也今日楽しかった?」
「まぁ楽しかったっちゃあ、楽しかったスけど」
「けど?」

頼むから先輩ら、腰にタオルを巻いてほしいっす。



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