「調べても事件や事故に遭った様子はない
そこで思い当たるのはこの裏世界の非日常から抜け出したかったんじゃないかっていう理由
君はまだ若い女の子なんだから日常に憧れて、それを求めたとしてもなんら不思議はないんだよ
だとしたら俺は人間を愛する者として、同じ情報屋として、教えてあげなきゃいけない
一度こちら側に足を踏み入れたらもう非日常から脱却することはできない、とね
それに情報屋である俺の元で働いてもらうのに君なら好都合だ
とまあこんな感じなんだけど、どう?」
「どう、とは……」
正直私はもう疲れていた
よくこんなにペラペラとしゃべれるなぁ
「俺の仮説なんかより本当の理由きかせてよ」
有無を言わせぬ物言いですね
「はぁ…別にそんなに大した理由じゃないですよ
非日常からの脱却といえばそれもそうかもしれませんけどそんなことよりもただめんどくさかったから辞めただけです」
「は?」
あ、イケメンがすごいマヌケな顔してる
「このまま裏世界にいるわけにもいかないから普通の生活してみようかと思った点では日常に憧れを持っていたのかもしれませんね」
「アッハハハハハ!」
いやいや、急にそんな高笑いされたらびっくりするわ
「思ってた以上に面白いよ、アハハ!」
お腹を抱えて笑う折原さんに今度は私がマヌケ面を曝しているような気がする
「じゃあまずは手始めに俺のことは臨也って呼んでよ」
「え、それはやめときます」
雇い主を名前で呼び捨てってどうよ
ひとまず私は断る
「……ふーん、それはそれでいいよ
いつか名前に臨也って呼ばせてみせるから」
ちょ、ちょっとだけきゅんとしたのは内緒です
折原さん、その妖しい笑顔はみなかったことにします
仮説の検証
前 / 次