ちょうどリビングに戻ったとき携帯が鳴った
着信だ
ということは、電話をかけてくるのは彼しかいない…

「はい」
「俺だよ」

知ってます

「どうしました?」
「いやぁ、名前ひとりで大丈夫かなと思って」

もうどんだけ心配性なんですか折原さん
これでも私、一応大人なんですよ?今までひとり暮らししてたんですよ?

「大丈夫ですよ、心配しないでください
あ、今から夕飯の買い物に行くんですけどビーフシチューはどうですか?」
「いいね、よろしく頼むよ」

よし、承諾してもらえた!

「はい!」
「気をつけてね」
「折原さんもお仕事がんばってください、では」

あ、好きな食べ物聞くの忘れた……



そして買い物に行き、夕食の準備をして、自分のお昼は簡単に済ませ、言われた通りファイル整理をしながら折原さんの帰りを待つ
傾いた夕陽が部屋を真っ赤に染めていた
それを見ながら物思いに耽る
とても穏やかな1日だった
これは私にとってとても新鮮なこと
こんな生活があるんだと知った
ずっとこのまま生きていけたら、いつかこれが日常だと思える日が来るのだろうか
いや、甘い考えは捨てよう
折原さんが私から興味を失うのは時間の問題
そうなれば私は解雇で、もうこの生活との縁はなくなるだろう
夕陽が沈むのは早く、辺りは薄暗くなっていた
日常になるまで
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