「率直に言うと殺風景な部屋だねぇ」
とても年頃の女の子の家とは思えない
「必要なものしか置いてませんから」
今日は名前の荷物整理に俺もついて来ていた
本棚に資料らしきものはなく空っぽなのでテーブルの上にあるノートパソコンに手を伸ばす
「折原さん、情報はすべて消したので探ってもなにも出てきませんよ」
やっぱり名前は最初から俺の目的わかってたか
「そりゃそうだよねぇ、俺もあんまり当てにはしてなかったよ
でもここに情報が残ってなくても名前の記憶には残ってるからね、そっちに期待するよ」
っていうわけでもなくて、本当は情報なんかどうでもいいんだ
「私、記憶力悪いです」
名前が欲しかっただけだから
「なんか手伝うことある?」
「じゃあそこに入ってるジャージ全部引っ張り出してください」
ジャージ?
女の子がそんなに頻繁に着るものじゃないよね
しかし出てきたのは数枚のジャージのみ
ほかの服は見当たらない
「もしかして服ってこれだけ?」
「はい、これだけあれば事足りるので」
まともな服が昨日会ったときのやつしかないじゃないか
これは名前の生活用品諸々を揃えてあげなきゃね
「ん?その枕も持って帰るの?」
なぜか大事そうに抱えている枕をみて、そうきいてみる
「え、と…そ、そうですけど」
いつもは感情を隠そうとするのに珍しく照れている
「名前って自分の枕じゃないと寝れないタイプ?」
声を出すのも恥ずかしいのか俯き加減でこくこくと頷いて答えた
ねぇ…名前は無意識だろうけどそういう男を煽る行為はやめたほうがいいよ
俺、男だから
ただ君が欲しかっただけ
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