「あ、それちょーだい」

「だめ」


スコアブックを持って教室に戻ってきた御幸は私のチョコをひとつ取って口の中に放り込んだ

あーあ、とられた

まあいっか


「ヒャハハ!なに御幸に餌付けしてんだよ、名前」


一連の流れを見ていたのに隣の席の倉持はそんなことを言う


「餌付けじゃなくて、集られてるの」

「ありがと、名前ちゃん」


イケメンくそ眼鏡なんか腹立つ

イケメンだけど…!

悔しいけどこの顔が好きだからしょうがない


「キスってチョコレートみたいに甘いと思う?」


いきなりなにを言い出すんだ、この男は


「知らね」


倉持が答えたが、御幸は私に話しかけてくる


「名前ちゃん、試してみない?」

「は?御幸と倉持が?」

「ちげーよ!」


あ、ごめん

ちょっと混乱して変なこと言っちゃった


「俺と名前ちゃんが、だよ」


いや、ますます意味がわからない


「こういうこと」


流れるような動きで唇を奪われた


「ははっ、顔真っ赤」


なに、今の…

脳内処理が追いつかなくて固まっているのに、視界の端で倉持までもが頬を染めているのはわかった


「名前ちゃんてツンデレ?」

「ちがう!」

「チョコの味した?」


言わせんな、ばか

恥ずかしい


「もっかいちゅーしていい?」


くそ眼鏡





……………いいよ



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