「おかえり苗字さん」
屋上から教室に戻ると隣の席の小湊くんに声をかけられた
「あ、た、ただいま」
サボってきたあとだからどこか気まずい
「体調悪いの?」
「ううん、大丈夫」
席に着いて机の中を探る
「じゃあ…サボり?」
なんか、今一瞬、空気変わった…?
小湊くんて、おとなしくてかわいい人だと思ってたけど、そうでもないのかもしれない
前髪に隠れて目は見えないのに、その鋭い視線に射抜かれたような気分だった
「次、数学だよ」
「え、あ、うん」
それもほんの刹那でいつもの雰囲気に戻って心の中でホッと息を吐く
「あれ?教科書…」
机の中や鞄の中を見ても入っていない
「忘れた?」
「…そうみたい」