御幸と入れ違いで教室に入ると名前がなんともいえない表情で俺の席に座っていた
「あいつになんか言われたのか?」
迷うことなく御幸の席にどかっと座る
「もっちは好きな人いる?」
「ぶっ」
予想外すぎて吹き出しちまったじゃねぇか
絶対御幸に変なこと言われたんだ
でも名前は真面目に質問しているから俺も真面目に答えるしかない
「いる」
お前が好き、とはまだ言えないけれど
「そうなんだ」
と、すごく驚いていた
俺だって好きなやつくらいいるっての
びっくりした顔もかわいいな、なんて思ったり
買ってきた炭酸を口に含む
しゅわしゅわ
「俺がお前のこと好きって言ったらどうする?」
「ええっ、えーっと…」
あー俺、今すっげぇずるい言い方してる
亮さんと弟くんが名前のこと好きなのは明らかだし、他の部員もこいつを気に入っている
だが名前の気持ちはわからない
といってもあの兄弟に好かれてるんだから俺なんかがつけ入る隙はねぇだろうな
「やっぱ答えなくていい
変なこときいたな
今のは忘れてくれ」
口の中には炭酸の甘ったるさだけが残っていた