たかが一年されど一年
少なくとも俺にとって名前が兄貴追って青道へ行ってからの一年はとても長かった
でもやっと、兄貴と名前に会える春が来た

「あ!春市!」

寮に荷物を運びに来た俺の耳によく知る声が届いた

「春市っ!」

彼女は勢いよく抱きついてきた

「名前、」

咄嗟のことでも俺はしっかり彼女を受け止められる
もう小さい頃とは違う

「久しぶり」
「うん!久しぶり!春市、背伸びた?」

ちょっと上目遣いで見上げる名前は変わらず俺の大好きな笑顔を向けてくれる
でも、会わない間になんだかすっかりきれいになっていた

「伸びたよ」
「春市」

もうひとつ、俺のよく知る声

「兄貴…」
「亮介、春市だよ!」
「知ってるよ」

そう言いつつ、さりげなく名前の肩に手をおき、俺から離した
言葉が少し刺々しいのは気のせい……?

「名前、もう遅いからそろそろ帰りなよ」
「あ、そうだね、春市も疲れてるよね
明日から練習だからしっかり休んで!じゃあ亮介、私帰るね」
「送るよ」
「え、いいよ大丈夫」
「ダメ
すぐに暗くなるだろ」
「あ、じゃあ俺も…」

兄貴と名前の自然なやりとりになぜか焦ってつい口走っていた

「お前は同室の先輩にあいさつとかあるだろ」
「ありがとう春市、でもほんとに大丈夫だから」
「う、うん」
「ほら、早く帰るよ」
「待って、カバン取ってくる」

そう言って名前はどこかへ走り去ってしまった
彼女の後姿を見送ってから兄貴をみた
視線はすぐに気づかれた

「春市、俺は譲らないよ

ポジションも、名前のことも」

バレてる
完全に俺の気持ちバレてる……

「俺も…っ!俺も負けない」

クスッと笑われた



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