「でも、てっきり御幸先輩かと思ったよ、苗字さんの好きな人」

「え?ちがうよ、前にもちがうって言ったよ?」

「うん、そうだけど…」

「なんか、結局小湊くんのあの言葉の通りになったね」


たぶん私はその前から惚れてたけど、


「さっきみたいに春市って呼んでよ、ね?俺に惚れた彼女さん」


彼の口角が上がり、唇はきれいな孤を描く

いつもはかわいいのに、今はほんとにすごくかっこいい

なによそれ反則…

私は俯いて顔を赤くするしかない


「は、るいち…くん」


小さな声でぎこちなく呟くことしかできなくて


「かわいい





………我慢できない」





頬に手を添えられて上を向かされる


「嫌だったら、拒んで」


そうはいってもたぶん拒まれることはないと踏んでいると思う

春市くんは確信犯

もちろん私が拒む理由はない

唇が近づく

胸元から覗くインナーや鎖骨や喉仏がすごく色っぽくて目を奪われる

心臓がドキドキする

息が詰まる

唇に感じた熱に思考はとろけて目を閉じた

桜色の髪の野球少年に教えられた味を、私はきっと忘れない



| ≫