別に約束をしたわけじゃないが、もはや暗黙の了解のようになっていた屋上での昼休み
今日の名前ちゃんはカフェオレを飲んでいた
俺はキャッチャーというポジションのせいか、人の小さな変化にもよく気がつくほうだと思う
いつもと変わらない名前ちゃんだけど、いつもと少しちがう
今日はなにか俺に言いたいことでもあるようにソワソワした様子だった
けれど俺はあえていつものように隣に腰をおろした
最初からわかっていたことだった
俺が名前ちゃんに好きだと気持ちを伝えても成就なんかしない
名前ちゃんを困らせるだけ
友達と好きな人はちがう
だからこそ、このふたりきりの昼休みは俺にとって大きな存在だった
「御幸先輩、あの私、明日から教室でお昼食べます
だから屋上に来るのやめます」