嫌い、嫌い、大嫌い。



何故か分からないけど、時々猛烈に死にたくなる、と山崎は微笑みながら言った。
世の中の出来る奴が妬ましくて、努力してるのに足を引っ張る自分に吐き気がして、死にたくなるんだそうだ。


「だから、土方さんは嫌い」

「俺はお前が思い描くような人間じゃねえ」

「知ってます。努力して上手くなって、でも努力したことを言わない人ですよ、あんたは」


でも、だから嫌いだ。そう言う山崎はヘラヘラ笑っていた。
まるで、どうでも良い世間話をするように、軽い口調で。
少し疲れているのだろうか。俺は眉をひそめて思案する。
けど、答えは出ない。


「いつも相談役だし捕り物だって足引っ張るし挙げ句の果てには監察は組の中でも忠誠心が低いとか言われるし」


息継ぎ無しで突然そんなことを言われるもんだから、少し面食らった。
山崎は止まらない。止まろうともしない。
壊れそうなその姿に何もできない。


「なんでもある土方さんなんか大嫌い」

「…おう」

「俺が怪我する原因はあんたなのに、俺が他で怪我すると許さないし」

「おう」

「全部一人で抱え込んで俺には分けてくれないのに、俺のことは全部知ってて」


ズルいから嫌い、と言って山崎は一筋の涙を流した。
それから、堰を切ったように泣き始める。笑顔はいつの間に消えていた。俺はそっと彼を抱きしめる。


「大嫌いだけど、それと同じくらい大好きなんです。どうしてくれんですか」


嗚咽の中に小さくそんな声が混ざって、俺は少しだけ笑った。
可愛い、可愛い、俺の恋人。どうか、もう少しだけ幸せに浸らせて。






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