依存。



情事のあと素っ気ないのはお互い依存しないため。
いつ死ぬか分からない職業だから、というのが理由。
でも、やっぱり淋しい時もあったりして。


「十四郎さん、」


甘えるような声でそっとその人を呼ぶ。部屋には布団が敷かれていて、でも二人で呑気にお茶なんか飲んでて。ムードの欠片もないから、呼んでみた。


「!?あぢっ!」

「危なっ。何やってんですか」


動揺したらしい土方さんは湯飲みをひっくり返した。
俺はこぼれたお茶を布巾で拭く。拭きながら、もう一度。


「十四郎、さん」

「どういう風の吹き回しだ。金はねえぞ」


どうやらおねだりしていると勘違いしているみたいだ。俺はヘラリと笑ってそれを否定した。


「やだなあ。ほしいものなんざ一つもありませんよ」


――強いて言うなら貴方が欲しい。
耳元で囁くと、畳に押し倒された。そして、噛みつくように口づけられる。


「もうてめえのもんになったつもりだがなあ…」

「もっと下さいよ。全部、見せて?」

「全部くれてやるよ。その代わり俺のもんになれ」


少しずつ依存度が高くなって、簡単に死ねなくなればいい。
死なせるもんか。

いつか彼が死んだ時。
その時は自分も消えれば良い。

嗚呼、だから。


「メチャメチャに壊して下さい」

「上等だ。覚悟しやがれ」


激流のような行為が身を満たすくらいに。





「起きれないんですけど」

「奇遇だな、俺もだ」


二人で布団の上にKOダウン。動けないくらい激しいソレを最後にやったのは随分前のことだ。
まさか、良い大人になってからこんな動くと思わなかった。
気だるい体を動かして横に寝ていた土方さんに抱きつく。


「でも、」

ポツリと呟けば、彼は俺を見つめた。


「スゴく、よかった」


赤くなる顔を隠す為に土方さんの胸板に顔をうずめた。


「退、」

「!?」


思わず顔をあげれば、真顔とぶつかった。
整った顔に見つめられるだけで心拍数が急上昇する。


「愛してる」

「俺も…っ。土方さんっ」


ギュッと腕に力を込めれば、応えるように土方さんは背中を撫でる。それだけじゃ足りなくて、どちらともなくキスを交わした。

未練なく死ぬ?
そんなことさせてやるか。
お互いがいなくなったら生きていけなくなるくらい愛しあって、それから後悔して消えてやる。
だから今は。


二人で愛しあおう。








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