拍手の沖山と同じ設定です。 読んでない方のために簡単に説明すると、 恋人だった沖山が沖田さんの政略結婚で別れて一年未満です。 切ない系ですが、お祝いしてます。よ。
沖田隊長のお誕生日会をやった。 もちろん、そこには沖田隊長の奥さんもいた。二人きりよりみんなで祝った方が楽しい、と彼女が積極的に賛成してくれた。
俺はと言えば、“友達”の一人として、沖田隊長のお誕生日会に参加していた。 長い間、そんな立ち位置で参加したことはなかったから、戸惑うかと思ったけど、そんなことはなかった。むしろ周りが気を使ったくらいだ。自分でも、そんな自分に驚いた。 でも、何故かはすぐに分かった。 沖田隊長に恋慕を抱かない誕生日会はなかった。いつだって、俺はあの人が好きだから。それこそ、友人の頃から。
「お誕生日、おめでとうございます」
「おう、山崎かィ。貢ぎもんはあるのかィ?」
「いや、言い方!!プレゼントって言って下さいよ」
酒が入ったせいで赤い顔した沖田さんと喋る。軽口の応酬だって楽しい。触れるたびに、この人が好きだと強く重い知らされる。 胸の痛みだって、ないわけじゃないけど。
「はい、お誕生日おめでとうございます」
差し出したのは、青い包装紙に包まれた箱だ。今年は何を送ろうか酷く悩んだ。 込める気持ちは今までと少しも変わらない。全力だ。
あげたものも、もらったものも、全部覚えてる。 今年の俺の誕生日は加湿器をもらった。 去年のクリスマスは月のネックレスをあげて、靴をもらった。 記念日にはブックカバーをあげて、パズルをもらった。 彼の誕生日にはマグカップをあげた。 大切な宝物だ。あげたものですら、全て。
「どうも。開けていいかィ?」
「ええ、もちろん」
さっそくプレゼントを開けて嬉しそうな沖田さんに少しだけ微笑む。 ―――俺たちの間には、いくつか約束ごとがあった。 約束ごとというか、習慣というか。贈り物をするときは、必ずしていることだ。
「煙管かィ」
「そうです」
「まぁた無駄なもん探しやがって。つーか、“る”のめんどくささはてめえも思い知って、」
「沖田さん、俺ァ狙ってやったわけじゃありません。……そういうことにしといてくださいよ」
――贈り物をするときにしりとりを始めたのはいつのことだったか。 しりとりに合わせると、恋人同士がするような贈り物はできない。けど、俺たちはそれで良かった。気持ちがあれば、物なんてどうでもよかった。
恋人から友達に戻るとき、そういう特別なルールはやめようと決めていた。それは、俺たちのケジメだった。 だからこそ、プレゼントには悩んだ。しりとりを続けていいものなのか、否か。
分からなくて、ルールを見てみぬふりした。
「俺ァ、たまたまそれを選んだだけです。あの続きじゃありません」
「……そうかィ。まあ、なんにせよありがとな」
少し切なそうに笑った彼に首を振った。弱い自分が悪いんだ。悪いんだ、けど。 これくらいは甘えたいんだ。
「じゃ、また明日な」
「はいよ。おやすみなさい」
沖田隊長はプレゼントを大切そうに抱えて立ち上がる。誕生日会の主役がいつまでも同じとこにいるわけにもいかない。手が伸ばせないことがなんと悲しいことか。
「お誕生日おめでとうございます、沖田さん」
去っていく背中に小さく呟いて、俺は自分の部屋に戻った。
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