のーぱん。

※しぶに上げたやつ。
※下品というか年齢制限ギリギリをくぐり抜けてます。
※山崎春ノーパン祭りやろーぜ





大変です。
俺の箪笥から、パンツが全て消えました。


「パンツゥゥゥ!!!!」


空の棚を見て、絶叫したのが、午前8時50分。稽古後の朝風呂が終わり、部屋に帰ってきたときのことだった。
浴場の篭入れに用意していたものもなくなっていたし、誰かの苛めだろうか。そういえば昔、下着を盗むおっさんがいたなと思い出すけど、さすがに再犯はないだろう。……ないだろうと思いたい。

だいたい、なんで好き好んで男の下着なんか。と、思うわけである。文句を付けたい気持ちでいっぱいだったが、時刻は8時57分。始業時刻まであと3分である。今日は定例会議に参加する必要はないが、さすがに制服に着替えねばまずい。渋々、得意の早着替えで制服を着た。


「うぅっ……気持ち悪いよこれ……」


朝から半べそをかきながらも、パソコンに向かう。息子の位置が定まらなくて気持ち悪いしスラックスに擦れて痛いし妙に風通しがいいし、気分は最悪だ。時刻は、9時10分。すでに限界である。

こうなれば、誰かに下着を借りるか買ってくるしかない。いや、最初からそうすれば良かったんだ。
思い立つも、月末の忙しい時期に休憩時間などないにも等しい。10時を回ると、副長の雑務に付き合わされて、パンツどころじゃない。しかし、パンツはないのである。あの薄い一枚が、どのくらい生活を快適にしてくれているかを実感した。

10時を半分過ぎた頃から、二人きりで今月の偵察内容をまとめ始める。もうそのときは、仕事とパンツで頭がいっぱいになっていた。
そんな折だった。


「山崎、今日どうした」


副長に尋ねられたのは、11時から数分経った頃だ。
忙しいせいでいつもの数十倍はキレやすい副長様からの言葉に虚を突かれる。そんなことを聞かれるとは思ってなかったし、ノーパンで態度がおかしくなるとは思えなかったからだ。(これでも一応監察だし)


「いえ。……何か変でしたか」


それでも思わず慎重になってしまった受け答えに、土方さんは吸っていた煙草の灰を落としながら「いや、」と短く返した。副長室常備の灰皿はもうそろそろ満杯である。
ああ、捨ててこなくちゃ。鉄はお使いに行ったばっかりだし。きっともう暫くは帰ってこない。


「ノーパンなのに、よく平然としてられんな」


他のことを考えていたせいで、一瞬言われたことを聞き逃しかけた。
数秒間、言われた意味を考えて、考えて、考えて、ようやく飲み込んでから茫然とする。きっと、自分の表情は鳩が豆鉄砲を食らったような、ひどく滑稽なものだろう。


「今、なんて?」

「ノーパンなのに、よく平然としてられんな」

「な、な、なんで知って……っ!?」

「そりゃまあ、仕組んだ張本人だしな」


当たり前のように言った土方さんが、ポケットからパンツを取り出した。青と白のストライプ模様のトランクスは、今朝履こうと思ってた代物だ。


「それ、俺の!!!ちょっ、返して下さいよ副長!!」

「おい、てめえ、そんな態度で返してもらえるとか思ってんじゃねーぞ?」


鬼の副長と呼ばれる所以となっている鋭い眼光をこちらに向け、ヒラヒラとパンツを振る。チクショー、普段はヘタレの癖に、なんでこんな時に限って鬼なんだよ!!
心の叫びも虚しく、パンツは未だ副長の手の中だ。

「くっ」

「ああ、あとそれから」


そう言って、書類の影から出てきたのは、今朝まで履いていたパンツだった。
ラケット柄のそれは、ここ一番のお気に入りだったのに。哀れ、今や鬼の手中におさまっている。

しかも、あろうことか、自分の鼻を近づけて、その匂いを嗅ぎ始めたではないか!


「くっせえな。お前の匂いがプンプンする」


自分を辱しめるような言葉に、カッと目の前が赤く染まるような想いがした。視界がボヤけて滲む。ああ、なんでこんなことを言われないといけないんだ。もうやめてほしい。


「ほら、おねだりしてみろよ?」

「……か、返して下さい」


やっとの思いで俯きながら言葉を吐く。
もうほとんど泣いているようなものだ。恥ずかしくて事切れてしまいそう。耳が痛い。


「じゃあ、これの匂い嗅ぎながら自慰してみろよ。見ててやるから」

「そんなこと、できません」

「そうか?股間、膨らんでっけど」


喉奥で笑いながら、副長は俺の目の前にトランクスを投げた。時刻は11時30分。

お昼休みまでには充分すぎる時間が残されていた。