「……お前ら、何やってんの」
非番の土方が起きてきて見つけたのは、卵に落書きを施す沖田と山崎の姿だった。 炬燵の上には千代紙やらサインペンやらがばらまかれてる。
「何って、お内裏様とお雛様でさァ」
「今日は雛祭りじゃないですか」
「ああ、うん、知ってる。ちげえよ、そういう問題じゃなくてよ」
お前ら仕事はどうしたんだとか女の節句に男が何やってんだとか、諸々。 色々説教はあるのだが、寝起きで上手く働かない頭では言葉まで出てこない。そういえば、昨日も三時間睡眠だったよな、なんて考えて。
「土方さん、朝ごはん食べましたか?」
お雛様を炬燵の上に置いて、(千代紙の着物と簡易な顔が描いてある)山崎に尋ねられる。首を横に振って炬燵の中にもぐった。まだ朝飯を食べられる気分じゃない。「ゆで卵ありますけど」と遠慮がちにかけられた言葉にもう一度首を振る。
「めんどくせェ。ゆで卵、口ん中に突っ込んじまえばいいんでィ。そのまま窒息死しろ」
「殺す気かよ……」
「もちろん」
顔の横に総悟の手が伸びる。何かと思えばお内裏卵を置かれた。そのサイズ感は可愛いが、顔はドSっ気に溢れている。そうか、こういうところで性格が出るのか。
「あとは五人囃子と三人官女ですか?」
「俺が官女やる」
「駄目ですよ!!隊長が作ったら顔が怖いし!!」
「ちゃんとメス豚に仕上げるから」
「それが駄目なんですってぇぇぇ!!」
茶番のような会話を聞きながら、ウトウトと微睡む。どうしてかは分からないが、あれほど出来なかった二度寝ができそうだ。
「あとで近藤さんに見せに行こうぜィ」
「じゃあ、ちゃんと可愛く描かなきゃ駄目ですね」
俄然、やる気になったらしい二人は、お馴染みのあの歌を歌い出す。それが良い感じに子守唄になって、ますます眠気を誘った。もう抗えない。諦めて、目を閉じる。
――今日は楽しいひな祭り。
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