※ちょっと未来のひじやま
初詣に行こう、と多分付き合って初めて言われた。 付き合って今年で何年目よ。10年軽く越えてんだろ。 もうアラフォーだよ俺ら。アラフォーって三十後半じゃなくて四十前半の方だよ終わってんだろ。
「寒いですしやめましょーよー」 「うるせえ、行くんだ、よっと」 「ギャアアア!!脇腹はやめて下さい脇腹はァァァ!!」
ちょっとメタボが気になり始めた腹回りなのだ。健康診断は毎年余裕だけど。ミントンのおかげじゃね?まだまだいけるね。 土方さんは、メタボの兆候なんて見えない。いい加減コレステロール値はスレスレだけど、引き締まった筋肉は昔と変わらず。真選組をまとめあげる鬼としては上出来だ。本当に、まだまだ若い者には負けてない。
そんなわけで、近くの正月だけ賑わう廃れかけの神社に二人で足を運ぶ。 冷たい風を受けながらも、二人で腕を組んで歩いた。この人混みじゃバレねえよ。土方さんは低い声でそう言った。痺れるね、いつも怒鳴ってるせいか枯れかけた声は俺の胸をドキドキさせる。昔の若くて張りのある声も好きだったけど、この声も好きだ。
酔いそうなほどの人に囲まれながら、なんとか賽銭箱に辿り着く。二礼二拍手一礼。 神様仏様、信じてないけど今年も平和な一年になりますように。ああ、それから土方さんが検査に引っかかりませんように。桂が捕まりますように。副長が土方さんのままでありますように。ドS帝国はいやです。マヨネーズと煙草を安くして下さい。今年こそはパシりに使われませんように。土方さんと一緒にいられますように。 たくさん願い事をしながら、さっさと人混みから抜けた。本当に酔ってしまいそうだ。
「随分長かったが…なんの願い事したんだ?」 「言ったら叶わなくなるじゃないですかー」 「俺が叶えといてやるから言ってみ」
促されて、全部暴露したら「お前は俺ばっかりか」と笑われた。そう言われてみれば、とそこで気がつく。
「副長は何にしたんですか?」 「お前がもうちょっと体力つけて三回戦までできますように」 「いや…それはもう年なんで、ちょっと勘弁してもらいたいです」
苦笑いを溢しつつも、彼の願いならば努力くらいはしてみようかと思う。 そうして、二人で穏やかに会話をしながら、屯所にゆっくり歩いて帰った。
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