そんな、自覚。。




※沖→←山
※現代パロ













「沖田さん、お誕生日おめでとうございます」

「おう、ありがとな」

「なんか、ほしいものありますか?」

「そうだねィ…じゃあ、ちょっとジッとしてなせェ」

「え?」


ただの男の幼なじみが、誕生日プレゼントにキスを強引に奪った。もっと言えば、男の幼なじみだと純粋に信じていたやつからキスを奪われた。言い方を変えただけ?ほっとけ、それだけ重要なんだ。
俺の家の屋上で良かった、でなければ叫びだしていたかもしれない。夜風が頭を冷やす。というか、既に顔の血がザッと引いていて、物理的に寒い。夏の夜の蒸し温かい外で寒いとは何事だ。


「いやだったなら悪かったねィ。ちゃんとプレゼント貰ったし、忘れて下せェ」


読めない表情でそんなことを言った相手にどうすれば良いか分からずに首を振った。いつもより少し伸びた髪が頬につく。暑さで汗をかいていたらしい。そんなことにも気がつかなかった。
少し自分の中で考えてみる。触れるだけのキス。何か大切なものにするような。形のいい柔らかい唇。揺れる亜麻色の髪。どれ一つ取ったって嫌な要素はなくて。
ならば、何故自分はこんなにも戸惑っている?何を困惑している?嫌悪感は、ないのに。


「俺ァ男ですよ?」

「知ってらァ」

「なんでキスしたんですか?」

「キスしたかったからに決まってんだろィ」

「どうして?」

「そんな気分だったんでさ」


したかったから、した。シンプルな動機にますます俺は困惑した。沖田さんは誰にでもキスをねだるような男ではないと思っていたが、果たして記憶違いだったろうか。


「ザキ、」

「はいよ」

「キスはいやでしたかィ?」

「キスはいやじゃありませんでしたが、なんだかひどくモヤモヤしてます。沖田さんは誰のキスでも良かったんですか?」

「てめェだから良かったんでさァ」


ニヤリと子供が悪戯を仕掛けたような無邪気な笑顔を浮かべて沖田さんは言う。すると、俺の顔は日が出るんじゃないかというくらい熱くなって…。


「恥ずかしい人」

「かわいいやつ」

「かわいくなんか…!!」

「かわいいですぜ?」

「お…沖田さんなんか知りません!!!」

疑いなど全くしてないであろう信じきっているその口ぶりに俺は耐えきれずに、逃げるように屋上から降りた。声が上ずっているとかはこの際無視しよう。気にしたら負けだ。
ああ、それにしたって、なんでこんなに心臓がバクバクするんだろう。俺とあの人はただの幼なじみ。しかも男どうし。過ちが起きる可能性は皆無に等しい。だいたい、あのドSに罵られたい女はたくさんいる。俺なんか、…ってあれ。


「これ、俺があの人を好きな前提じゃ…」


気づいた途端に、また血の気が引く。
なんだなんなんだこれは。こんなことありえるだろうか、いやない普通は。でももしそうなのだとしたら。


「実る可能性は皆無に等しいじゃねえかァァァ!!考えるんじゃなかったァァァ!!」


思わずアホみたいに叫んだ。



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続きそうで続かないよ\(^o^)/