雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 別々の宿題-04-


「いや、そんなものじゃないよ。6年生が1年生の宿題をやってたりするんだ。」
『例えば、文次郎が昆虫採取で長次が朝顔の観察とかね。』

団蔵が笑いながらきり丸達に話す。
「何で俺が昆虫採取なんだよ!!長次っ!お前も朝顔育ててどうする!!」
その様子を想像したのかは組の教室は笑いに包まれる。ただ2人、金吾と庄左ヱ門を除いて。

『金吾どうした?』
「僕、喜三太が凄く心配なんです。まだ登校してないし。」

喜三太か。こんなに登校が遅いと、上級生の宿題をもらっていたと言う可能性が高くなってきたかもしれない。

「蓮夜さん、でも逆に1年生が6年生の宿題に当たる場合もあるってことですよね?」
『……その通りだ。』

まだ笑いに包まれている皆の中で、思案顔の庄左ヱ門が俺に問うてきた。その一言で教室は静まり返り俺に視線が集中し、俺の言葉で場が固まった。

「喜三太がまだ登校してないのが気になるんだ。」

冷静に物事を分析して話す庄左ヱ門はやはり、は組の学級委員長だと思う。

「え、喜三太来てないの?」
「夏休み前、喜三太が言ってたんだ。」
「こまったなぁ…。宿題が難しすぎるよぉ。」

これは一気に可能性が高くなった。今回の宿題はそれぞれのレベルに応じた個人メニュー。難しすぎる事なんてあるはずないのに。今頃、教職員の方々も気づいているだろうか。

「それって喜三太に6年の宿題が当たったかもってこと?」
『かも知れないな。可能性は大いにある。』

その瞬間みんなは"うげーっ"と顔をしかめた。やっぱりそうだよな。心配だよな。6年生の宿題だもの。俺だって一緒だ。でもどんな宿題だったかわからない限り動けない。

「宿題のプリントを小松田さんに任せるなんて!」
「先生達も無責任過ぎるよぉ!」

三次郎と虎若の言葉がずしりと胸に重くのしかかる。うん、本当にごめん。事が起きてから謝っても意味はないんだけど。

『すまないな。同じ事務員として責任は俺にもある。』
「そんな!謝らないでください!!」
「蓮夜さんは忍務だったのですから!」

あわあわと焦りながらもみんな弁解する。いや、悪いのはこちらなんだ。それから、先生達は悪くない。そうなんだ。予想もしなかったあんな事が続いたのだからさ。

『先生達は悪くないんだよ。宿題を封筒に入れる作業を先生方がしていた時……、』

自称剣豪の花房牧之介が学園破りに来て、それを戸部先生が嫌々相手をして。
孫兵の飼っている毒虫が大量脱走。
ドクタケ忍者が学園の近くを彷徨いているところをヘムヘムに目撃されて。
学園長が突然の思いつきで我慢大会が始めると言い出し……。

『てんやわんやで宿題の袋詰め作業を小松田さんがやるハメになったんだ。』

悲惨だろ?と目線で訴えればコクコクと頷くは組の子達。俺が居れば袋詰めは俺がやることになっていただろうにな。何て考えても後の祭り。

『とりあえず、喜三太の旨を先生方に伝えてくるよ。』

シュッと彼らの前から姿を消して、目指すは教職員が集まる教室だ。



prev / next

[ back to top ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -