雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ カリスマ髪結い師と-01-


ああ、楽しみだ。
早く時間が来ないだろうか。

こんな感じで俺は朝からずっとそわそわしているまあ、表には出さないけれど。でも小松田さんに「今日はいつも以上にご機嫌だね〜。」と言われたっけ。うーん、隠しているはずが感情が表に出るなんて。それに見破られるなんて。忍としてどうなんだ。……恥ずかしいなあ、もう。

おっと、そんなことより待ちに待った約束なのだ。早く行かなければ。少し浮かれ足で向かう先は4年生長屋。そこには当たり前だが滝夜叉丸や喜八郎、三木ヱ門、タカ丸くんがいた。

「おやまあ。蓮夜さんどうされたのです?」
「4年生に何かご用でしたか??」
「僕と約束してたんだよ。髪を切って、結わせてもらうの。」

こてんと首を傾げるタカ丸くんはその様子を見てふふふと笑うが、3人はその言葉を聞いた途端、声をあげて俺に迫ってきた。

「か、髪を切るんですか!?」
「せっかくの綺麗な髪なのに!!」
「止めてくださいよ〜!」

3人は俺が髪が邪魔だから短くするのだと思っているのだろうか。その勘違いが面白くて思わず笑ってしまった。流石にここまで伸ばした髪をばっさりと切る覚悟はない。

『違う違う。ずっと放置していたから、たまには髪を揃えて貰おうかと思ってね。』

もともと女だからそう言う事には敏感で。今は男だけど綺麗にするのは大好きなのだ。それに、竹成様に髪が綺麗だと言ってもらってたから、手入れはきちんとしておきたい。

「「そうでしたか!あ〜、吃驚した。」」

ぴったりハモる所を見ると何だかんだで滝夜叉丸と三木ヱ門は仲が良いのだと思う。実力も認めあっているしね。ただ、2人ともアイドルの座は譲り合わないけれど。

「髪、今度僕にも弄らせて下さいね。」

で、お前は何しているんだ喜八郎。腰に抱きついて上目遣いとか。何で俺に色目使うんだ。そんなんじゃ、俺は落ちないぞ。なんて思ってたくせにやっぱり甘い。駄目ですか、と子犬のような目で見つめてきた喜八郎に即答してしまった。だって可愛いかったから仕方ない。

「「喜八郎!」」

ばっと滝夜叉丸と三木ヱ門が俺から喜八郎を引き剥がす。そして矢羽根を飛ばし始めた。でも4年生同士の矢羽根なので何を言っているか俺には理解できない。彼らの話し合いが終わるまで待つか。



「"何やってんだよ喜八郎!"」
「"お前蓮夜さんと約束なんか取り付けて!せこいぞ!"」

滝夜叉丸と三木ヱ門が矢羽根で喜八郎に怒声を浴びせたが、喜八郎はそ知らぬふりをする。それを見た2人は自分達も負けじと蓮夜に迫った。



「蓮夜さん!今度私に火器の鍛練をつけていただけませんか!?」

矢羽根で何かを会話した後、三木ヱ門が俺に迫ってくる。いきなりのことに俺は目をぱちくりと瞬かせた。火器なら他にも得意な人はいっぱいいるぞ。

『別に俺は構わないんだが、むしろ俺で良いのか?』
「是非!蓮夜さんがいいんです!」
「な、なら私とは今度一緒に街に行きませんか!?」
『お、おう。全然良いけど。』

三木ヱ門の言葉が終わると同時に滝夜叉丸がグイッと三木ヱ門を押し退けて話を振ってくる。肯定の答えを返せば、2人は俺の見えないところで小さくガッツポーズをした。

『じゃあ約束な。』
「「はい!!!」」

しかし、あの迫力は凄かった。アイドル学年はやっぱり濃いなと思い直した今日この頃。



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