▼ は組と言付け-02-
タカ丸くんは今まで忍術を習ったことがなかったため基礎的な知識を補うためには組の子達とよく一緒に授業を受けているらしい。
「知らないことを教えてもらうのに年は関係ない」と言って熱心にメモを取ったりしていると土井先生が言っていた。それに俺は素直にすごいと思った。なかなか出来ることではないと。
さて、そのタカ丸くんは次の授業4年生と共に受けるらしく先程俺達の元を去っていった。俺に「今度、絶対に髪を結わせてね。」と約束を取り付けて。
『あ、山田先生。』
彼らの元に来た理由を思いだし、山田先生に向き直る。さっきはタカ丸くんに遮られたから仕切り直し。
『忍務の途中で利吉さんにお会いしたんですよ。』
すると山田先生と土井先生は吃驚したように目を見開いた。何故なら2人は俺の忍務で行く場所をだいたい知っていたから。
「へぇ!帰り道でか?」
『ええ、駿河国の方で。』
そう言えばまたまた驚きに目を開かせる。確かにあり得ないぐらいの確率だからね。本当に運命じゃないかって思ったね。
「えー!蓮夜さん駿河国まで行ってたんですか!?」
「すごーい!僕たちなら相模国の辺りまでの往復で30日かかるのにねー、金吾!」
「忍務を含めて1ヶ月半で帰ってくるなんて!!」
「「「すごーい!!!」」」
うわあああ。良い子達のキラキラした視線がすっごく恥ずかしい。もう照れる、じゃなくて。話が逸れた。
『その時、利吉さんから山田先生に言付けを頼まれまして。』
頼まれた時の様子を思い出す。まるで俺自身が山田先生であるかのように、利吉さんが鬼気迫る姿で話すので涙目になりかけたのだ。
『「父上!お忙しいのはわかりますが、たまには母上の元へ帰ってあげてください!!!」……っとおっしゃてました。』
少しの声真似とあの時の利吉さんの様子を再現すれば、山田先生はうっと声を詰まらせた。
「……蓮夜が一瞬、利吉に見えた。」
そりゃそうだ。そう見えるように頑張って再現したもの。なかなかの出来だったでしょう。
『また近々学園に来るそうです。その時は覚悟してくださいねともおっしゃてました。』
くすくす笑って言えば、山田先生はため息をつき頭を抱えた。今度利吉さんが来たときの様子がありありと浮かんだのだろう。土井先生達は山田先生のことを慣れた光景として苦笑しながら見ていた。
『山田先生も大変ですねえ。』
「蓮夜、哀れみの目を向けんでくれ……。」
『次の長期休暇は帰れそうなんですか?』
いつもからは想像出来ないくらいの山田先生の弱々しさに俺が聞けば、今度は土井先生までお腹を押さえてしまった。その姿に、あちゃあと俺まで頭を抱えたくなった。
「その、な。授業が進まないんだ……。」
『あと補習、ですね。』
「頼む、追い討ちをかけないでくれ。」
御愁傷様です。
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