雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ は組と言付け-01-


そろそろ授業が終わる時間だろうか。
そう思い俺は山田先生の元へと足を運ぶ。たしか1年は組の良い子達は今の時間は実技の授業。この学園内の騒がしい所へ向かえば自ずと山田先生にも会えるはず。
ヘムヘムの突いた鐘の音が耳に届く。わいわいとはしゃぐ声が大きくなるにつれて俺は早く皆に会いたくて足を早めた。

『みんな!』

俺が声をかければみんな一斉に振り向いて驚きに目を瞬かせる。そこには、は組と山田先生だけではなくて4年生が1人と土井先生が一緒にいた。

「「「あああ、蓮夜さんおかえりなさーい!!!」」」

足下にわらわらと群がってくる良い子達は揃って俺を見上げる。みんな、お兄さんにご褒美ありがとう。

「蓮夜さん、今回の忍務は何だったんですか?」
「お土産ありますかー?」
「相手は強かったですか?」
「馬鹿だな、蓮夜さんにかかればちょちょいのちょいなんだよ。」
「あ、そっかー!」

きゃっきゃっと盛り上がる彼らはとても楽しそうだ。って言うか、ちょちょいのちょいってなんだよ。俺はそんなに強くないぞ。

「こらこらお前たち、忍務のことは聞いちゃ駄目だろ。」

はぁとため息をつきながら良い子達の会話を収拾する土井先生。えっーと皆は抗議をするもそのあとは何も聞いてこないところちゃんと分別はついている。本当、現代の生意気で自己中な子供達に見せてやりたいわ。

「でも予定より早く忍務を終わらせて帰ってくるなんて流石蓮夜さんです!!」
「うん、はじめは3ヶ月ぐらいって言ってたもん。」
「「「ねー!」」」

力説する庄左ヱ門と同意の声をあげる彼らのせいで俺は内心照れまくりだ。もう駄目だ、なにこの可愛い生物は。胸がきゅんきゅんしっぱなしだ。
堪らなくなって同じ目線にしゃがみこみ、彼らをぎゅーと抱き締めた。

『ふふふ、ただいま〜。』

緩みっぱなしの俺の顔とは組の様子を見て山田先生と土井先生は呆れたように苦笑を漏らす。それを見て俺は少しだけ恥ずかしさを覚え、頬をぽりぽりと掻いた。そして誤魔化すように、こほんと一つ咳払いをしてから先生方に向き合う。

『山田先生.土井先生、ただいまです。』
「「ああ、おかえり蓮夜。」」
『あ、そうだ「あのー、」…ん?』

山田先生に話を切り出そうとすればすぐ隣から上がる声に俺は振り返る。そこには4年生の紫色の忍装束に、この時代ではかなり派手で目立つ金髪の青年がいた。ああこの人が。

「もしかして、あなたが事務員の秋月蓮夜さんですか?僕は斉藤タカ丸。この間編入してきたんです。」
『秋月蓮夜です。よろしくお願いします。』

やっぱり想像していた人と同じ人物だ。
タカ丸くんの第一印象としてはおっとりしたマイペースな人かな。小松田さんとはまた違うけど、彼自身も危機感があまり無さそうな気がする。でも、髪結いでこのキャラクターならお姉さまからはすこぶる評判は良さそうだな。

『学園長からいろいろと聞きました。同い年でもあることだし、分からないことがあれば気軽になんでも聞いてください。学園のことでも忍術のことでも。』
「はい、お願いします。と言うより同い年なんですねー。じゃあ蓮夜くんって呼んでもいいですか?」

にこっと笑うタカ丸くんは成る程イケメンだ。本当にこの学園の顔面偏差値高すぎるな。

「よろしくおねがいします、蓮夜くん」
『ふふ、よろしくです。タカ丸くん。』



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