▼ 長期忍務からただいま-01-
こんこん、と忍術学園の門を数回叩く。
この場所に帰ってくるのは久しぶりな気がする。およそ1ヶ月半ぶりぐらいだろうか。駿河国あたりに行くだけでも時間がかかるので忍務が長期になるのは当たり前なんだけれど。
「はいはーい、ちょっと待ってくださいね〜。」
学園の中から聞こえたのは久しぶりに聞く小松田さんの気の抜けるような声。少しすれば学園の門が開いた。
「あ、蓮夜くんだ!おかえりなさーい!!」
『ふふ、ただいまです。』
相変わらずな小松田さんの顔を見れば、忍術学園に帰ってきたと実感がわく。くすっと笑って答えれば小松田さんも嬉しそうに笑いかえしてくれた。
「そういえば蓮夜くんが長期忍務に言ってる間、いろいろあって4年生に編入生が来たんだよ〜。」
へえ、編入生か。そう言えばお話の途中で上級生に1人派手な髪色の男の子が出てきたような。まあ、その子なのかはわからないけど会うのが楽しみだな。
「でねー、そのあともいろいろ大変で学園が無茶苦茶になったりしたんだよ。」
えへへ、と笑ながら話す小松田さんだが今の会話の中に笑う要素なかったんだけど。むしろ聞いてるこっちが吃驚だよ。なんで学園が無茶苦茶になったの。きっと小松田さんと学園長あたりが根本的な原因じゃないのか……?
はあ、と1つため息を吐いて吉野先生やその他の教職員、まあ特に土井先生の心中をお察しする。
「で、他にもねーーー。」
もう、いつまで続くんだよ。と言うより、どんだけ色んな事が起きるんだ。まだまだ続きそうな彼の話に俺は頭を抱える。
「あ〜〜!蓮夜さん!!」
遠くから声が聞こえてきたのでそちらを見やればこちらの方に走ってきている青色の忍装束の4人。癒しが走ってきた。何て言うご褒美なの。
「おかえりなさい、長期忍務お疲れ様でした!」
「今から学園長の元へ行かれるのですか?」
にこにこと俺に向ける笑顔は可愛らしい。1年は組といがみ合っている時とは比べ物にならないな。まあ、それも年相応の姿だから俺からしたら可愛いものだけど。
『ただいま。三郎次、久作、四郎兵衛。』
わらわらと俺の足元に集まる3人と同じ目線に合わせて答える。もう1人は持ち前のツンデレのツンが発動しているらしく俺になかなか近寄ってこない。
『左近、お前もこっち来なよ。』
そう言って手招きすればゆっくり近寄ってきた。その姿がもう可愛すぎて思いっきり頭をくしゃくしゃっと撫でる。
「あ、もう止めてくださいよ!」
『はは、そんなこと言うなよ。久しぶりに会ったのに。』
笑いながら撫で続ける俺の手を左近は無理やり止める。そしてまたそっぽを向いた。
「べ、別に僕は蓮夜さんに会いたくなかった訳じゃなくてですね!怪我が無いなら別に……!!」
え、なに。今のデレ加減。めちゃくちゃ破壊力あるんだけど。そっぽを向きながら耳を真っ赤にして話す左近の姿に他のメンバーは苦笑を漏らす。素直になればいいのにと。
「それより蓮夜さん。」
『どうした、久作。』
「小松田さんがまだ1人で喋っておられますが…。」
『……あ…。』
2年生に夢中ですっかり忘れてた。
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