雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 家族の絆-03-


『そう言うムキになるとこが子供なんだよ。』

そう言って、きり丸が膨らませている頬を両手で包み込んでぺちゃんとつぶす。ああもう、可愛いな。

『子供はね、子供らしくいれば良いんだよ。』

この時代、平成の世と違い子供らしく生きていける子達なんて少ない。生きていくためには、嫌でも働かないといけないし、どんなに小さくたって戦に駆り出される子供だっている。だからこそ……。
だからこそ、もう少し。もう少しで良いからこの子達が"殺し"を覚えるまでは、子供らしくいさせてあげたいんだ。この赤ん坊達みたいに真っ白なままの間は。

それは、土井先生も学園長も学園の大人達誰もが願ってることだと思う。
ぼーっとそんなことを考えていると、俺の考えていることがわかったのか土井先生が近寄ってきて頭にぽんっと手をのせた。その表情はいつにも増して優しかった。

「ーーにしても蓮夜、お前器用だな。」
「あの、蓮夜さん今の自分の状況わかってますか?」

ふいに呟かれた土井先生の言葉に疑問符を浮かべれば、乱太郎にまでにいわれて俺はますます疑問符を増やし首を傾げた。

「何も思わないのか?その格好、と言うか状態に。」

俺の格好?状態?それは背中に赤ん坊3人背負って、左腕に2人抱えてきり丸とじゃれていたことをいってるのか。はて、これのどこが変なんだ。

「うーん、先生。蓮夜さんは天然なんですかね?」
「天然でもないだろう。」

庄左ヱ門と土井先生がこそこそと話しているが、全部丸聞こえだ。そんなに可笑しいのか。わからん。

「蓮夜さーん、こっちも手伝ってくださーい!!」

しかし俺の思考はきり丸の声で遮られた。全く、しょうがない奴だ。
この日から、ほぼ毎日のようにきり丸のバイトに付き合わされるようになったのは言うまでもない。



***



「きり丸って蓮夜さんに凄くなついてるよな。」
「うん。基本的にちゃんと言うこと聞くし。蓮夜さんに対しては素直だよね。」
「私、あんなきりちゃん見たの初めてだったよ。」
「でも、きり丸に負けないぐらい僕も蓮夜さんのこと好きだよ!」
「「「俺だって!/僕も!/私も!」」」

わいわいと騒ぎながら話すは組の様子を見て私は口を開く。

「まあ要するに、全員蓮夜が大好きってことだろ。」

私の言葉に皆こちらを向いた。
そして全員が口を揃えて言う。

「「「そう言う土井先生もでしょ〜〜?」」」
「ははは、当たり前だろ。」



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