雲外蒼天-本編- | ナノ


▼ 会計帳簿-02-


「〜〜っ、蓮夜!!」

俺の言葉に文次郎は目くじらを立て、夜中にも関わらず大声をだした。なんとも迷惑な奴だ。まあ、その原因を作ったのは俺だけれど。
しかし、こいつは予想通りの反応をしてくれるね。本当、おもしろい。

「…ふぇ、蓮夜さん?」
『ああ、神崎ごめんな。文次郎が煩かったな。ふふふ、もう部屋に戻って寝よう。』
「ふぁ〜い。」

今の文次郎の怒鳴り声で起きた神崎は、欠伸をしながら目を擦った。俺は団蔵を左手で支え、寝惚けている神崎の手を右手で掴んだ。

『田村も眠いだろ?佐吉を部屋に運んだら、もう長屋に戻っていいからな。』

上級生とは言え、まだまだ成長期なんだ。忍務以外で、夜遅くまで起きているなんて酷だし体にもきっと悪い。それに、田村は日の昇りだす頃に起きて鍛練してるし、夜は寝かせてやりたい。

「それではお言葉に甘えて。潮江先輩、蓮夜さん。おやすみなさい。」

田村は佐吉を背負うと、一言挨拶をしてから部屋を出ていった。

『さてと、みんなを部屋まで運んだら俺が帳簿手伝うよ。』
「いや、今日はもう終わりだ。」
『いいのか?』

ため息を一つ吐いてから、俺の提案をやんわりと断った。おやまあ、珍しい。文次郎が帳簿や算盤を片づけだしたところを見ると本当に今日は終いらしい。

「神崎は、俺が部屋に連れていく。」

文次郎は神崎の手を引き、俺は団蔵を抱いて彼らの部屋に向かって歩きはじめた。だが、文次郎がふと立ち止まって俺の方をみた。

「……明日の朝、帳簿の手伝い頼んでもいいか?」
『ふふ、俺で良ければいつでも力になるよ、文次郎。』

珍しく素直な友に俺は笑った。



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